Journal of Oral Biosciences
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46 巻, 1 号
February
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ORIGINAL
  • Yasushi Shimizu, Toshihiro Hara, Yoshinobu Ide
    2004 年 46 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/08/19
    ジャーナル 認証あり
    これまでの歯の計測に関する研究は二次元的であるため, 曲がっている根管の直径を計測するのは困難であった。μ-CTは非破壊的に任意の断面で計測できる長所を有しているため, 近年では歯や骨に用いられている。そこで, 上顎第一小臼歯の根端における頬側根管, 舌側根管の形態を詳細に計測することを目的とした。試料は, 40歳代上顎第一小臼歯, 8本 (男4本, 女4本) を用いた。μ-CTにて作成された3D画像上で各根管に直交するスライス面を12μm間隔で設定し, 根管の長径, 短径を計測した。計測は根端より1.68mmのところまで行い, 短径が最も小さい値を示したところを最狭窄部とした。さらに, 長径を短径で除し扁平率を求めた。最狭窄部は頬側根管では根端より1.20mm, 舌側根管では1.08mmに位置していた。扁平率は頬側根管で136.7%, 舌側根管で150.2%であった。根管の最狭窄部位は頬側舌側ともに約1mmに位置し, 舌側根管のほうが扁平であることがわかった。
  • Yasutaka Azuma, Kyoko Watanabe, Shinya Shirasu, Michiharu Daito, Kiyos ...
    2004 年 46 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/08/19
    ジャーナル 認証あり
    アデノシンおよびATPは炎症反応の制御に関与し, 細胞発育, 細胞分化およびアポトーシスにも影響を与える。本研究において, アデノシンおよびATPによるヒト白血病細胞U937分化能について検討を行った。アデノシン10-3Mにおいては, CD11bの発現測定により, 著明なU937分化誘導が認められた。同様にATP 10-3, 104Mにおいて, 有意なU937分化誘導が認められた。また, アデノシン10-3MおよびATP 10-4MにおいてU937細胞数の有意な抑制が認められた。次にわれわれは, all-trans retinoic acid (ATRA), 1, 25-dihydroxy-vitamin D3 (VD3), およびphorbol 12-myristate 13-acetate (PMA) といったような分化誘導剤によって分化させたU937に対するアデノシンおよびATPの影響について検討を行った。興味深いことに, アデノシン10-3, 10-4MにおいてATRA誘導性CD11bの発現が有意に増強された。しかし, ATRAはアデノシン誘導性CD11bの発現には影響を与えなかった。同様にATP 10-3, 10-4MにおいてもATRA誘導性CD11bの発現が促進され, さらにATRAはATP誘導性CD11bの発現を増強した。これに対して, VD3とPMAについては, それぞれアデノシンおよびATPとの併用によりCD11bのさらなる発現増強が認められた。以上の結果より, アデノシンおよびATPはヒト白血病細胞U937の分化を誘導し, ATRAによりさらに分化誘導が増強されるということが示唆された。
  • Kazuyoshi Higashi, Hideko Tsuzuki, Hiroyuki Hayashi, Akira Kawata, Koj ...
    2004 年 46 巻 1 号 p. 20-26
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/08/19
    ジャーナル 認証あり
    顎下腺主導管の研究は形態学的研究に限られており, 免疫組織化学的研究は非常に少ない。電子顕微鏡による検索で, 主導管上皮中に高電子密度の顆粒を含有している細胞の存在が報告されている。本研究ではラット顎下腺主導管を用いて, 神経由来の構造物を染め出すPGP9.5, クロモグラニン, セロトニンの免疫染色を行い, PGP9.5, クロモグラニン陽性細胞を見出した。それらの細胞はセロトニン陽性も示した。さらに, セロトニン陽性細胞を免疫電子顕微鏡で観察すると, 高電子密度の顆粒にセロトニンの局在を示す金粒子が集積していた。これらの結果から, 顎下腺主導管上皮中にはセロトニンを含む内分泌細胞が存在することが考えられた。PGP9.5反応陽性を示す点状の構造が上皮細胞間隙に存在していたが, これは電子顕微鏡観察結果で神経終末が観察されていることから, 神経終末であると考えた。このPGP9.5, クロモグラニン, セロトニンのすべてに陽性を示す細胞や神経終末は唾液成分の調整に関係するものと考えた。
  • Noriyuki Monoi, Hirotaka Ohta, Seiji Morishima, Yoshihito Ochiai
    2004 年 46 巻 1 号 p. 27-36
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/08/19
    ジャーナル 認証あり
    バイオフィルム (BF) の形成・病原性発現メカニズムの解明およびBFコントロール薬剤の評価に応用する目的で, ヒトの食物摂取条件をシミュレートした人工的な食物供給 (AFS) 法を組み込んだBFモデルを開発した。唾液コートを施したハイドロキシアパタイトディスクをBFの付着担体として用い, Streptococcus mutans を含む5菌種をBasal Medium Mucin (BMM) を連続的に供給したケモスタット型培養槽中で培養した。本条件下で, 12時間ごとに培養液全量をショ糖含有培地に置換し, 30分間培養した後, 再びフレッシュなBMMに置換する方法 (AFS法) によりBFを作製し, その生物学的および物理化学的特性を評価した。一方, 全置換培養することなく12時間ごとにショ糖を添加する, 既報の糖添加 (SP) 法によりBFを作製し, AFS法のBFと比較した。その結果, AFS法によるBFの細菌構成比, 糖含有量, pH変化および構造は, SP法と比較してヒト歯垢BFに近い特性を示した。また, 同一条件下におけるAFS法再実験において, 細菌構成比の再現性も確認された。これらの結果より, 開発した本モデルはBF形成・病原性発現メカニズムの解明および薬剤の評価に有用であると考えられる。
  • Yasutaka Azuma, Kyoko Watanabe, Masataka Date, Shinya Shirasu, Michiha ...
    2004 年 46 巻 1 号 p. 37-46
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/08/19
    ジャーナル 認証あり
    15-Deoxy-Δ12,14-prostaglandin J2 (15dPGJ2) は, peroxisome proliferator-activated receptor γ (PPARγ) のリガンドであり, 胃癌, 肺癌, 結腸癌, 前立腺癌, 乳癌といったようなヒトのさまざまな腫瘍のアポトーシスを誘導する。しかしながら, 白血病といったようなほかの癌細胞におけるPPARγのシグナル経路については, まだ解明されていない。そこで本研究において, ヒトT細胞白血病細胞株であるMOLT-4F増殖能への15dPGJ2による影響について検討を行った。15dPGJ2, 5μMにおいては, 1—3日間培養後, MOLT-4F増殖能を刺激し, 15dPGJ2, 10μM以上においては, 増殖能を抑制した。15dPGJ2の前駆体であるPGD2, PGJ2およびΔ12-PGJ2 (ΔPGJ2) 同様な増殖効果を示し, 高濃度においては増殖能を抑制した。また, p38 mitogen-activated protein kinase (MAPK) であるSB203580, およびphosphoinositide 3-kinase (PI3K) inhibitorであるLY294002は, 15dPGJ2および三種の前駆体は, MOLT-4F増殖能抑制した。これに対し, extracellular signal-related kinase 1/2 inhibitorであるPD98059は, 15dPGJ2および三種の前駆体による増殖能に影響を与えなかった。5μM PGD2, 5μM PGJ2, 1μM ΔPGJ2, 5μM 15dPGJ2はMOLT-4Fにおけるcyclin Aの発現を増強し, p18, p21, p27を含むCdk inhibitorの発現には影響を与えなかった。以上の結果より, PGD2, PGJ2, ΔPGJ2および15dPGJ2は, p38 MAPKおよびPI3Kの活性化によってcyclin Aの発現を増強させ, MOLT-4F増殖能増強を誘導することが示唆される。
  • —免疫組織化学的手法によるGABA(A)受容体内在化の検討—
    赤坂 徹
    2004 年 46 巻 1 号 p. 47-58
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/08/19
    ジャーナル 認証あり
    咀嚼筋の筋紡錘および歯根膜圧受容器の感覚を司る三叉神経中脳路核 (Vmes) ニューロンには, GABA(A)受容体が豊富に発現している。GABA(A)受容体は, アゴニストと結合した後に細胞内に取り込まれる内在化現象を生じる可能性が報告されており, GABA(A)受容体の内在化が咀嚼運動調節機構にかかわっている可能性が考えられている。今回, VmesにおけるGABA(A)受容体の内在化について, 主に免疫組織化学的手法を用いてVmesニューロン細胞体を蛍光染色し, ニューロン細胞体の蛍光強度を分析, 検討した。その結果, アゴニストを投与したラットのVmesニューロン細胞体で蛍光標識した二次抗体の蛍光強度の減弱が認められた。GABA(A)受容体の存在を示す蛍光強度の減弱が認められたことから, アゴニストの投与によりGABA(A)受容体の内在化現象が生じていることが示唆された。また, アゴニスト投与6時間経過群では蛍光強度の減弱が認められなかったことから, 蛍光強度の減弱は薬物投与による不可逆的な細胞傷害ではないことが示された。
  • 祐川 励起, 伊藤 一三
    2004 年 46 巻 1 号 p. 59-66
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/08/19
    ジャーナル 認証あり
    食虫目スンクスの頭蓋形態と側頭筋の関係についての詳細は明らかにされていない。スンクスの頭蓋標本, 顎関節の組織切片, さらに剖出した顎関節関節面と側頭筋を観察して, 頭蓋形態と側頭筋の関連性を考察した。側頭筋の起始部の頭蓋冠と停止部の筋突起の形態は, 側頭筋の顕著な発達に対応していた。側頭筋は上部, 中部, 下部の3つの筋束で構成されていた。上部と下部筋束は, 上下から中部筋束にオーバーラップしていて, それらの大部分の筋線維は中部筋束の厚い筋膜に停止していた。そして, 中部筋腹は頭蓋冠から起始して水平の状態で外前方に向かい筋突起に停止していた。そこで, 側頭筋の主な作用は下顎骨筋突起を水平の状態で内後方に引くことであると思われた。このような側頭筋の作用は, 筋突起内面から関節突起を経て顎関節にいたる一連の骨形態に影響を与えていることが示唆された。顎関節の上方と下方の関節の関節する方向, 関節面の大きさ, さらに関節円板の有無から, 顎関節では側頭筋と咬合によって生じる後下内方の作用を下方の関節が支点となって受け, 上方の関節の下顎頭が前後することによる下顎の上下運動に対応していると思われた。
TECHNICAL NOTE
  • 柬理 頼亮, 島津 徳人, 青葉 孝昭
    2004 年 46 巻 1 号 p. 67-73
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/08/19
    ジャーナル 認証あり
    マイクロフォーカスX線CT法 (μCT) は口腔科学分野におけるさまざまな領域に幅広く応用され, 主に硬組織試料を非破壊的に観察する方法の一つとして適している。しかし, 問題点として三次元立体構築像の再現性や骨体積 (BV) や骨表面積 (BS) などの構造パラメータに関する数値データが, どの程度の精度を保っているかについて不明な点がある。今回われわれは, 立体構築と形態計測を行ううえで最適な画像データと濃淡画像 (256階調グレースケール) を獲得するための操作手順と条件設定に着目した。観察対象として, ICRマウス顎関節 (4週齢) を使用し, 撮影にはμCT装置 (日鉄エレックス, ELE-SCAN) を使用した。立体画像の構築と形態計測には, 解析ソフト (ラトックシステムエンジニアリング, TRI-BON, TRI-SRF 2) を使用した。画質に影響を及ぼすパラメータとして管電圧, 管電流, 試料の中心軸とX線光軸とのズレを補正するシフト値, 画像コントラストを設定するウィンドウレベルとウィンドウ幅が上げられた。良好な画質の三次元立体構築像と形態計測を施行するためには, 機材の条件設定と操作手順, 解析ソフトの性質を十分に把握するべきであり, 微小な硬組織構造の形態と性状をより明確に把握することにつながるといえる。
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