保育者養成を目指す本校では、ML システムを用いたピアノ初心者用カリキュラムの開発に着手し5年となる。この間に、学生の実態の把握からつまずきの原因を明らかにし、指導内容と方法の両面から授業の見直しを行ってきた。授業をとおして手ごたえが感じられたので、実際に初心者がいかにピアノの基礎技能を習得し、音楽能力を高めることができたかを明らかにしたいと考えた。本論では音楽的な技能が形成される過程について ML システムが及ぼした成果と課題について研究することとした。方法として、初心者の学生を対象とし、ピアノ演奏技術、表現力、音楽基礎能力、心情の4つの側面から実技テスト及びアンケートを前後期各々のまとめの時期に実施し、検討することとした。この結果から、ML システムを活用した授業において次の成果が確認できた。ピアノ演奏技術・表現力の面では、タッチがしっかりし指先で音のコントロールができるようになり、フレーズを感じて弾けるようになった。音楽基礎能力の面では、特に音の高低、主要三和音、音階について理解できるようになった。心情面では、学生相互や指導者との間に良い雰囲気が生まれ、わかりやすい授業が作り出されていた。これらの成果に結びついた要因についても検討し、ML システムに関しては主に次の効果が大きいと考えている。直接的な機能による効果、指導内容の多様性からくる効果、学生相互及び指導者とのコミュニケーションによる効果の3つである。本研究の実践面では、教員研修を通じたカリキュラム改善の PDCA サイクルの定着が大きく寄与している。次のサイクルに向けた課題についても付記した。
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