これまでの実験で家兎受精卵を腔内より採取できるようになったが,子宮頸の機能には胚を子宮内に保持する役目もある筈である。この点を再検討する為,家兎の片側子宮頸管内にポリエチレン管(外径3mm,内径2mm)を装着して拡張し,それが受精,着床,卵消失に及ぼす影響を調べた。管はA型とB型とし,A型は頸管粘膜を完全に被覆し,B型はA型の管壁に4個の穴を開けて粘膜の影響が一部反映できるようにしたものである。
管の装着が避妊作用を持つことも考えられたので,交配後2日目にA型管を装着し,着床の有無を調べたところ63%の家兎に正常な着床がみられた。また交配前の装着でも受精卵が採取され,管装着が受精や着床に影響していないことが知られた。
実験1:A型又はB型管を装着した2群で,管装着側と反対側の着床部位数を比較した。A型管群では両側に有意差はなかったが,B型管群では反対側の平均6.1個に対し,装着側は3.1個と著しく減少していた。またA型管内には乳白色粘稠液が充満していたが,B型管内では無色透明な水様液が認められた。
実験2:B型管を装着した家兎を交配後3,4,5日目に屠殺して卵を検索したところ,5日目のみ,装着側の卵回収率が70%と反対側の95%に比し有意に低下していた。
実験3:正常交配兎の腔を交配後48時間から168時間にかけて洗浄し,排卵数に対し約10%の卵が採取された。
以上より頸管内腔が狭いという特徴が子宮内卵保持にある程度役立っているものの,腔への卵排出現象には頸管上皮の線毛運動による粘液流動が関与していると考えられた。
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