家畜繁殖学雑誌
Print ISSN : 0385-9932
28 巻, 3 号
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  • 鈴木 達行, 高橋 芳幸, 下平 乙夫, 桶谷 良至, 斉藤 則夫
    1982 年 28 巻 3 号 p. 119-122
    発行日: 1982/09/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    過剰排卵処理牛の発情後7~8日目に回収した受精卵の24個のうち,14個は過剰排卵処理牛の発情後7~8日目に採取した血清50%を含むリンゲル液に,残り10個をBMOC-3液に入れて,移植まで6~7時間25°C前後の室温に保持した。移植は外筒をつけたカスーガンにより,3人の未経験者を含む7人で実施したところ,前者で14頭中8頭(57.1%),後者で10頭中6頭(60%)が受胎し,両者に大きな差異がなかった。
    保存液として用いた血清の有効性を調べるため,過剰排卵処理後7日目に回収した7個の桑実胚のうち5個を20%ウシ血清加修正 Dulbecco's PBSで,2個を20%メンヨウ血清加 Dulbecco's PBSで培養したところ,前者では培養48~72時間後に,いずれも脱殻終了胚盤胞に発育し,72時間後にも変性がみられなかった。これに対し,後者では2卵共24時間後に拡張した有腔胚盤胞に発育したが,48時間後には変性を伴い,両血清のあいだに明瞭な差がみられた。
  • 高橋 政義, 小杉山 基昭, 松川 正, 滝沢 静雄, 林 孝, 久馬 忠, 兼松 重任, 菊池 武昭
    1982 年 28 巻 3 号 p. 123-127
    発行日: 1982/09/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    プロスタグランジンF 筋肉内注射による発情調整牛の発情行動と,排卵時期の関係について検討し,次の成績を得た。
    1.日本短角種未経産牛8頭および黒毛和種未経産牛1頭を用い,PGF•5mg•2回(24時間間隔)を1クールとして2クール処置した結果,1クール目(8/9頭)•2クール目(9/9頭)とも黄体期の牛全頭に発情を認めた。PGF投与終了から発情開始までの時間は,1クール目40.3±19.6時間,2クール目39.8±10.9時間であった。発情終了までの時間は,1クール目55.8±14.5時間,2クール目52.3±6.5時間であった。排卵までの時間は,1クール目72.3±15.7時間,2クール目70.0±9.9時間であった。
    2.発情持続時間は,1クール目15.5±8.2時間,2クール目14.3±5.0時間であった。発情開始から排卵までの時間は1クール目32.0±5.8時間,2クール目30.2±2.7時間であった。発情終了から排卵までの時間は1クール目16.5±3.4時間,2クール目16.2±3.8時間であり,無処置の正常発情牛の経過と明らかな差のないことが確認された。
  • 津村 巌, 佐々木 博一, 南 三郎, 松浪 俊郎, 平山 雅通, 黒坂 正光
    1982 年 28 巻 3 号 p. 128-133
    発行日: 1982/09/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    Macro- and microscopic observations were made on the cervix, vagina and vaginal vestibule of 39 piglets aged in 40 to 46 days (A group) and 18 porkers at 90 kg body weight (B group). The results obtained were as follows.
    1. The longitudinal (C1) and horizontal prominences (C2), low hill (C3), flat surface (V1) and vaginal vestibule (V2) portions were macroscopically distinguishable in the genital organ of both groups.
    2. As for the epithelium of the genital tract, characteristic differences were detected between vaginal vestibule and the other parts, but not between cervix and vagina.
    3. The muscle layers that compose basement of the rounded prominences and rugged mucosa of the low hill were examined. The muscle fibers in the prominences and low hill were more conspicu-ous than that in Vl.
    It is concluded that the border of the cervix and vagina is defined as that between C3 and Vl.
  • 湊 芳明, 豊田 裕
    1982 年 28 巻 3 号 p. 134-140
    発行日: 1982/09/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    種々の培地内で成熟を誘起したマウス卵子の受精能力について体外受精法を用いて検討した。化学組成の明らかな基礎培地内で成熟させた卵子の受精率および受精卵の中に占める雌雄両前核の形成に至った卵子の割合は,それぞれ38.4%および28.4%であり,対照区の排卵卵子の成績(前者が97.2%,後者が99.3%)に比べて有意に低い値であった。一方,基礎培地にFCS(1~20%)を添加した培地内で成熟を誘起した卵子では,受精率が82.1~92.7%に達し,雌雄両前核の形成は59.8~89.5%の卵子に認められ,いずれの割合も基礎培地区より高い値であった。FCSの非透析分画(5または20%)を添加した培地内で成熟させた卵子においては,受精率(69.0または53.8%)が基礎培地区より上昇したが,前核期に達した卵子の割合は約10%と低い値であった。これに対して,限外濾過分画(5%,分子量10,000以下)を添加した区では,受精率が43.9%と非透析分画添加区には及ばなかったが,前核期の受精卵の割合は72.0%と高い値を示した。
  • 斎藤 徹, 小幡 正樹, 高橋 和明
    1982 年 28 巻 3 号 p. 141-144
    発行日: 1982/09/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ハートレイ系モルモットを人工照明14時間/日のセミバリアー内動物室で飼育した。離乳日(1週目および2週目)より成熟雌,成熟雄または幼若雄と同居させた雌の腟初開口日令,腟初開口時体重,腟初開口持続期間を観察し対照群(雌のみ)のそれと比較した。その結果,次の成績を得た。
    1.腟初開口日令は1,2週目離乳とも成熟雄同居群で有意差(P<0.01)が見られ,対照群よりも8~10日早く腟が開口した。
    2.腟初開口時体重は2週目離乳の成熟雄同居群で有意差(P<0.01)が見られ,対照群よりも低体重で腟が開口した。
    3.成熟雄同居群は腟初開口時期に妊娠し,正常に分娩した。産仔数は成熟雌のそれに比較しやや少なかった。
    終りに,本実験に際し終始御援助,御鞭撻をいただいた残留農薬研究所毒性部長白須泰彦博士に拝謝するとともに,御協力いただいた食品農医薬品安全性評価センター安全性評価部萩田孝一氏に御礼申し上げる。
    なお,本稿の概要は1980年日本実験動物学会において報告された。
  • 若藤 靖匡, 外尾 亮治, 高橋 和明
    1982 年 28 巻 3 号 p. 145-149
    発行日: 1982/09/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    コンベンショナルな条件下で飼育されているウィスター•今道ラットを用いて初産の産仔数6匹以上を分娩した母親(初産6匹以上群)3,756匹と初産の産仔数5匹以下を分娩した母親(初産5匹以下群)63匹の2産目の産仔数を比較した。さらに初産6匹以上群84匹(3,756匹より抽出)と5匹以下群63匹を2産目分娩後の翌日解剖し,着床痕数,妊娠黄体数を調べた。その結果次の成績が得られた。
    1. 初産6匹以上群の2産目の産仔数は平均12.3±0.05であったが,初産5匹以下群の2産目の産仔数は平均9.1±0.5であり,後者の方が明らかに低かった(P<0.001)。
    2. 2産目妊娠時における卵•胚の着床前損失(妊娠黄体数一着床痕数)は初産6匹以上群では1.3個(8.3%)であったが初産5匹以下群では2.2個(15.1%)であり,後者の方が多かった(P<0.05)。
    3. 2産目妊娠時における胚•胎仔の着床後損失(着床痕数-産仔数)は初産6匹以上群では1.9個(13.3%)であったが初産5匹以下群では3.3個(26.6%)であり,後者の方が多かった(P<0.001)。
    以上の成績より初産で低産仔数を示したラットは2産目においても低産仔数を示す傾向があり,2産目における低産仔数の主要因は,初産目の場合と同様,着床前の卵•胚の損失および胚と胎仔の着床後の損失によるものであることが判明した。
  • 井上 忠恕, 吉田 光敏, 金川 弘司, 坂尾 伸夫, 倉岡 泰郎
    1982 年 28 巻 3 号 p. 150-153
    発行日: 1982/09/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    A micro-computer controlled freeze-thaw apparatus for embryo was developed. The apparatus can be freely programmed to choose the freezing temperature and the ice seeding can be smoothly performed with temperature increase held to within 1.0C. Eleven bovine embryos were recovered non-surgically 8 days after estrus from one superovulated donor. Four blastocysts were frozen by using the apparatus and then they were stored in liquid nitrogen for 55 days. They were thawed in a 25.0C waterbath for 10 seconds. After thawing, the embryos were examined under microscope and their morphological appearance was assessed being as good as before freezing. Four embryos were transferred to 4 recipients by the surgical method. One was diagnosed as a pregnancy by rectal palpation 60 days after transfer.
  • 金井 幸雄, 清水 寛一
    1982 年 28 巻 3 号 p. 154-158
    発行日: 1982/09/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    筑波大学附属農場に導入した沖縄産の沼沢スイギュウについて,性周期日数,発情持続時間及び排卵時期を調査した。8頭の成熟雌スイギュウを運動場(17m×21m)付開放式牛舎で群飼し,1979年の9月から12月にかけて3ヵ月間,1日2回各30分ずつ,精管切除雄を用いて発情観察を行った。発情持続時間の測定は,発情前期から3時間毎に雄を試情して行い,排卵時期は,発情終了後3時間毎に直腸検査を行って調べた。
    91日間の観察期間中に1頭あたり3~5回の発情が検出され,合計34回の発情が記録された。性周期日数は,平均19.1±5.8(SD)日でウシと同じであったが,9~38日の広い範囲に分布し,16日以下の短周期の出現率は30.8%と高かった。発情の開始は,日中•夜間ほぼ同率で認められ,9~24時間•平均17.3時間持続した。排卵は発情終了後6~18時間•平均13.5時間に認められた。外部発情徴候は全般的に不明瞭で,特にウシに見られる発情粘液の漏出及び雌同士の乗駕行動の観察頻度は低く,これらの発情微候から発情を検出することは困難であった。
    以上の成績から,スイギュウの性周期に関する特性は,発情徴候が不明瞭な点を除いて,基本的にはウシに類似しているものと推測された。
  • 鈴木 裕之, 上田 純治, 佐藤 美和子, 堤 義雄
    1982 年 28 巻 3 号 p. 159-166
    発行日: 1982/09/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    家兎における着床前の胚消失に関する研究の一環として,家兎子宮ならびに子宮頸の内腔液と粘膜組織抽出液のタンパク成分を,水平式ポリアクリルアミド平板ゲル電気泳動法により検討した。試料は妊娠6日目までの正常交配兎と過排卵処理兎より連日採取した。子宮と子宮頸のタンパク像はほとんど同時期に変化を示した。子宮と子宮頸の内腔液には血清中に見られないタンパク分画がいくつか検出され,それらの一部は粘膜組織抽出液にも存在していた。ウテログロビンの量的変動を指標とすると,過排卵処理兎における両器官のタンパク分画の変化は,正常交配兎のものに比べ,明らかに3日ほど出現時期が早まっていた。さらに,正常交配兎では交配後少なくとも3~4日目から,過排卵処理兎では交配直前から,子宮貯溜液が子宮頸管を流下していることが示された。以上の結果から,過排卵処理された家兎の子宮内腔液のタンパク組成の変化は胚の発育に比べ非同時的に進行し,高胚死亡の一因となることが示唆された。
  • 鈴木 裕之, 南橋 昭, 李 景廣, 堤 義雄
    1982 年 28 巻 3 号 p. 167-175
    発行日: 1982/09/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    これまでの実験で家兎受精卵を腔内より採取できるようになったが,子宮頸の機能には胚を子宮内に保持する役目もある筈である。この点を再検討する為,家兎の片側子宮頸管内にポリエチレン管(外径3mm,内径2mm)を装着して拡張し,それが受精,着床,卵消失に及ぼす影響を調べた。管はA型とB型とし,A型は頸管粘膜を完全に被覆し,B型はA型の管壁に4個の穴を開けて粘膜の影響が一部反映できるようにしたものである。
    管の装着が避妊作用を持つことも考えられたので,交配後2日目にA型管を装着し,着床の有無を調べたところ63%の家兎に正常な着床がみられた。また交配前の装着でも受精卵が採取され,管装着が受精や着床に影響していないことが知られた。
    実験1:A型又はB型管を装着した2群で,管装着側と反対側の着床部位数を比較した。A型管群では両側に有意差はなかったが,B型管群では反対側の平均6.1個に対し,装着側は3.1個と著しく減少していた。またA型管内には乳白色粘稠液が充満していたが,B型管内では無色透明な水様液が認められた。
    実験2:B型管を装着した家兎を交配後3,4,5日目に屠殺して卵を検索したところ,5日目のみ,装着側の卵回収率が70%と反対側の95%に比し有意に低下していた。
    実験3:正常交配兎の腔を交配後48時間から168時間にかけて洗浄し,排卵数に対し約10%の卵が採取された。
    以上より頸管内腔が狭いという特徴が子宮内卵保持にある程度役立っているものの,腔への卵排出現象には頸管上皮の線毛運動による粘液流動が関与していると考えられた。
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