めん羊精液において,凍結前の遠沈処理による精液の濃縮が融解後の精液性状に及ぼす影響について検討し,次の結果を得た。
1. 凍結前の遠沈処理による精液の濃縮は,融解後の精液性状を低下させることなく,逆に,精子運動率および精子奇形率を改善した。また,この傾向は,凍結前の希釈倍率が1:4でも1:9でも変わらなかった。
2. 遠沈処理を行う時期が,希釈直後,冷却•平衡後のいずれであっても,融解後の精液性状に大差はなく,遠心分離の速度も,精子生存率および精子奇形率に影響を及ぼさなかった。しかし,遠心分離の速度が速くなるほど,精子運動率が高まり,精子濃度も高まる傾向が認められた。
3. 遠沈処理による精液の濃縮時の上清除去量が多くなるほど,融解後の精液性状は低下する傾向が認められた。しかし,融解液を使用することにより,精液性状は改善され,この傾向は,精子濃度の高いときほど顕著であった。また,融解時の最適希釈倍率は,精液の濃縮度に関係なく,ほぼ一定と推測され,その際の精液性状は精子奇形率を除いて,濃縮度の高いものほど良好であった。
以上のことより,めん羊精液における凍結前の遠沈処理による精液の濃縮は,精液性状改善にも有効であることが示唆された。
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