家畜繁殖学雑誌
Print ISSN : 0385-9932
32 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 武中 慎治, 小林 正之, 福井 豊, 小野 斉
    1986 年 32 巻 4 号 p. 159-164
    発行日: 1986/12/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    めん羊精液において,凍結前の遠沈処理による精液の濃縮が融解後の精液性状に及ぼす影響について検討し,次の結果を得た。
    1. 凍結前の遠沈処理による精液の濃縮は,融解後の精液性状を低下させることなく,逆に,精子運動率および精子奇形率を改善した。また,この傾向は,凍結前の希釈倍率が1:4でも1:9でも変わらなかった。
    2. 遠沈処理を行う時期が,希釈直後,冷却•平衡後のいずれであっても,融解後の精液性状に大差はなく,遠心分離の速度も,精子生存率および精子奇形率に影響を及ぼさなかった。しかし,遠心分離の速度が速くなるほど,精子運動率が高まり,精子濃度も高まる傾向が認められた。
    3. 遠沈処理による精液の濃縮時の上清除去量が多くなるほど,融解後の精液性状は低下する傾向が認められた。しかし,融解液を使用することにより,精液性状は改善され,この傾向は,精子濃度の高いときほど顕著であった。また,融解時の最適希釈倍率は,精液の濃縮度に関係なく,ほぼ一定と推測され,その際の精液性状は精子奇形率を除いて,濃縮度の高いものほど良好であった。
    以上のことより,めん羊精液における凍結前の遠沈処理による精液の濃縮は,精液性状改善にも有効であることが示唆された。
  • 大津 昇三, 中村 松夫, 阿久沢 栄一
    1986 年 32 巻 4 号 p. 165-171
    発行日: 1986/12/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    黒毛和種妊娠牛を供試して,放牧および舎飼い方式により分娩前後の血液成分と発情回帰および受胎性について検討し,次の結果を得た。
    1. 分娩後,供試牛の体重は減少傾向を示したが,放牧牛は6週目,舎飼い牛は7週目以後,増減は少なくほぼ一定の値で推移した。
    2. 血中の総コレステロール,リン脂質,トリグリセライド濃度は,放牧牛,舎飼い牛ともに分娩時に減少し,その後増加傾向を示した。また遊離脂肪酸は分娩時に放牧牛,舎飼い牛いずれも上昇を示し,その後はゆるやかに減少した。トリグリセライド,遊離脂肪酸は,舎飼い牛より放牧牛の方が高い値であった。
    3. 血中プロゲステロン濃度は分娩前1週間目に放牧牛で2.6~10.1 ng/ml,舎飼い牛3.0~4.3 ng/mlの値であり,分娩時に急激に下降し0.5 ng/ml以下になった。また放牧牛では分娩後の初回発情発現前にわずかな上昇がみられたが,舎飼い牛では初回発情発現まで0.5 ng/ml以下で推移した。授精後は試験終了時の6週目まで2 ng/ml以下に下降することはなかった。
    4. 分娩後の初回発情発現までの日数は,放牧牛42.2±13.3日,舎飼い牛72.0日であった。また,受胎までの授精回数は,放牧牛1.4±0.8回,舎飼い牛1.0回で両区とも差はなかった。
  • 下司 雅也, 春日 直樹, 今川 健一, 森 純一
    1986 年 32 巻 4 号 p. 172-176
    発行日: 1986/12/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    GnRHの測定に固相法EIAの導入を検討した。
    合成GnRHとperoxidaseをbis-diazotizedbenzidineを用いて結合させ,POD標識GnRHを作製した。標識後,SephadexG-25カラムにより精製したところ,単峰性の流出パターンが得られ,このピークの分画をPOD標識GnRH溶液として用いた。一方,,カルボジイミド法によって作製した[Glu1]-GnRH-RSAを馬に反復投与して作製した抗血清から,硫安塩析法によってγ-globulinを分別し,Sephacryl S-300カラムによってIgGを精製した,このIgGをポリスチレンボールに物理的に吸着させて抗GnRH抗体吸着ポリスチレンボールを作製した。
    EIAは競合法によって行なった。酵素反応基質としてはo-phenylenediamine-H2O2を用い,反応後分光光度計で492nmの吸光度を測定した。その結果,1~1,000ng/mlの範囲で用量反応曲線が得られ,測定限界はほぼ1ng/mlであった。
    本EIA系に対し牛臓器酸性抽出物による抑制反応を行なったところ,下垂体柄抽出物のみ標準曲線と合致した希釈曲線が得られ,他の下垂体前葉•肝臓および横紋筋抽出物では,反応が認められなかった。
    これらの結果から,本法によってGnRHのEIAが可能であると考えられた。
  • 浜野 晴三, 豊田 裕
    1986 年 32 巻 4 号 p. 177-183
    発行日: 1986/12/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    Sperm rich portions of fresh boar ejaculates were washed twice and preincubated in a modified Krebs-Ringer bicarbonate solution (Toyoda et al., 1971) at different concentrations for various periods at 37°C under 5% CO2 in air. The preincubated spermatozoa were then added to pig eggs matured either in vivo or in vitro. Final sperm concentration at insemination was adjusted to 5 × 105 cells/ml in each experiment.
    The rate of penetrated eggs, as examined at 20 h after insemination, was markedly increased with elevated sperm concentrations during preincubation and with the increased preincubation periods, reaching 83-100% with spermatozoa preincubated at a concentration of 40 × 108 cells/ml for 4 h. These spermatozoa showed vigorous, hyperactivated movement when diluted in fertilization medium.
    Penetrated eggs at stages of anaphase to telophase of second meiosis were frequently observed at 4 h and female pronucleus was observed at 6 h after insemination. While in vitro matured eggs did not develop further due to failure in male pronucleus formation, in vivo matured eggs reached the 2-cell to 8-cell stage after 48 h in culture.
    These results demonstrated the possibility of in vitro capacitation of boar ejaculated spermatozoa in a defined medium and suggested that sperm concentration during preincubation is important to capaci-tate spermatozoa.
  • 坪田 敏男, 金川 弘司
    1986 年 32 巻 4 号 p. 184-187
    発行日: 1986/12/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    1984年5月1日より7月1日までの62日間にわたって円山動物園で飼育されているオス1頭,メス3頭の性行動を観察した。乗駕行動は,乗駕開始,腰部の前後運動,後肢の痙攣様運動および乗駕終了の順で起こり,1回当りの平均乗駕時間は23分であった。乗駕は,5月初旬より6月下旬までみられた。メスグマ3頭はおよそ20日間に継続せずに不定期的な間隔をおいて乗駕を許容した。
  • 石橋 功, 古川 寿郎
    1986 年 32 巻 4 号 p. 188-194
    発行日: 1986/12/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    調節した照明条件下で飼育した839頭のWistar-Imamichiラットに,10~40IUのPMSG又はPMSG•hCGを投与して,投与量と着床の関係を明らかにした。さらにPMSG•hCG40IU処置ラットの妊娠1~7日にプロラクチンを投与して,着床の改善を図ると共に,血清中のプロジエステロン(P)値を測定して,着床困難の原因について検討した。
    1)PMSG(又はPMSG•hCG)10~40IUを投与したラットの妊娠率は,95.0~17.5(90.0~27.5)%で,投与量の増加に伴って低下した(P<0.05~0.001)。2)PMSG(又はPMSG•hCG)20IU処置ラットの妊娠ラット当りの着床数は14.4(16.2)個で,30および40IU処置の着床数10.4および11.0(12.3および10.3)個より有意に高かった(P<0.05または0.001)。3)PMSG投与群とPMSG•hCG投与群の間には,妊娠率および着床数に差がなかった。4)PMSG•hCG40IU処置ラットの妊娠1~7日に7.5~15IUのプロラクチンの投与は,妊娠率(70.0~82.5%)および着床数(15.1~18.7個)を有意に改善した(P<O.05~0.001)。5)PMSG•hCG40IU処置後プロラクチン15IUを投与したラットの妊娠2~8日におけるP値は,152.7~237.2ng/mlの高い値を示した。
    以上の結果から,高単位の性腺刺激ホルモンを処置した成熟ラットに対するプロラクチンの投与は,卵巣黄体を刺激してP値の低下を防ぎ,着床を改善すると推測される。
  • 福井 豊, 椿 実, 小林 正之, 小野 斉
    1986 年 32 巻 4 号 p. 195-201
    発行日: 1986/12/25
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    47頭のサフォーク種雌羊について,非繁殖季節に60mgの6-methyl-17-acetoxyprogesterone(MAP)を含む膣内スポンジと600IU妊馬血清性性腺刺激ホルモン(PMSG)で発情誘起した場合の受胎におよぼす雄羊(4頭)の性行動の影響について検討した。処理後11または12頭の雌羊に対して雄羊1頭を同居させ,48時間連続観察を行った。観察項目は発情雌羊頭数,発情雌羊1頭当りの雄羊の乗駕回数,射精回数雄羊別の平均射精間隔(時間),乗駕回数/射精回数(比率),射精順序である。
    雄羊の性行動は雌羊により有意に変動した。雄羊4頭(A:4才,B:3才, C:2才, D:15か月齢)の平均乗駕回数および射精回数はそれぞれ12.6と3.3回,35.7と6.6回, 8.4と1.8回, そして36.0と2.5回であった。乗駕回数/射精回数については,最も若齢の雄羊(D)が14.6と他の3頭のそれよりも有意に(P<0.01)高かった。雌羊に対する雄羊の射精順序も雄羊の個体により異なり,雄羊Dはある特定の雌羊に集中して射精した。このような雄羊の性行動は雌羊の発情出現率に有意な差を示さなかった。しかし,雄羊Aと雄羊Dの受胎率に有意な(P<0.05)差が見られた(75.0%と27.3%)。また,未経産雌羊の受胎率は経産雌羊よりも有意に(P<0.025)低かった(27.8%と71.4%)。
    以上の結果から,非繁殖季節に発情誘起された雌羊について自然交配を行う場合,雄羊の性行動および雌羊の経産の有無を考慮に入れる必要があると考えられた。
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