家畜繁殖学雑誌
Print ISSN : 0385-9932
33 巻, 4 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 橋爪 力, 浜野 光市, 佐々木 捷彦, 兼松 重任
    1987 年 33 巻 4 号 p. 163-166
    発行日: 1987年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    牛精漿の卵細胞質溶解現象をハムスター卵子で観察した。牛精漿を,透明帯を保持した卵子および除去した卵子に添加すると,いずれの場合も卵細胞膜の一部に溶解変化が生じ,時間の経過とともに卵細胞質が拡散,消化される過程が観察された。反応の出現速度(精漿を添加してから大方の卵に反応が認められるまでの時間)は1%添加区より10%添加区の方が早かった。本反応の出現速度は透明帯の有無に関係がなかった。豚精漿ではこの反応は認められなかった。
    以上の結果から,牛精漿は低濃度でもハムスター卵子の卵細胞質を溶解しうること,この反応は濃度依存性であること,この因子は透明帯を容易に通過しうることが明らかになった。
  • とくに血漿ステロイドホルモンの動態と胚回収成績について
    青柳 敬人, 岩住 安晃, 和地 秀一, 権 五鏡, 高橋 芳幸, 金川 弘司, 宮本 明夫, 梅津 元昭, 正木 淳二
    1987 年 33 巻 4 号 p. 167-172
    発行日: 1987年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    PMSGあるいはFSHを用いて過剰排卵処置を施したウシの血漿中プロジェステロン(P)ならびにエストラジオール17β(E2)値の動態と胚回収成績との関係について検討した。
    FSH投与群のPおよびE2値の変動パターンは,PMSG投与群に比べ,より自然発情時のパターンに類似していたが,両ホルモン製剤間の胚回収成績については有意な差は認められなかった。PMSG投与群の54.5%(6/11)およびFSH投与群の16.7%(3/18)で発情後のE2値の再上昇が認められた(P<0.05)。PMSG投与群で発情後にE2値の増加を示した例の正常胚率は28.1%と正常例の84.6%に比べ,有意に低値を示した(P<0.01)。
  • 梶原 豊, 後藤 和文, 小坂 昭三, 中西 喜彦, 小川 清彦
    1987 年 33 巻 4 号 p. 173-180
    発行日: 1987年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    体外で成熟させた牛卵胞卵子を媒精後,さらに体外で培養することにより脱出胚盤胞までの発育が観察された。
    屠殺された牛卵巣の小卵胞(1~7mm)から採取した供試卵子は卵丘細胞が卵子の表面に1/3以上付着しており,卵子細胞質が均一で良好なものを用いた。25mMHEPES緩衝Earle型TCM199に5%仔牛血清を添加した培地内で20~24時間の成熟培養後,媒精に供した。
    精子は凍結精巣上体精液を用いた。カフェイン5mM含BSA不含のB.0.液で洗浄後,精子濃度30~36×106個/mlになるよう調整した。さらにBSAを10mg/ml含むB.0.液で等量希釈し2~3時間の前培養後に媒精に供した。
    媒精6時間後に卵子を発生培地に移し,継続培養した。発生培地としては仔牛血清(0~10%)を含む25mMHEPES緩衝Earle型TCM199を用いた。媒精48あるいは72~77時間後に卵丘細胞層より卵子を遊離させたが,遊離後も卵子は卵丘細胞層上で継続培養した。
    その結果,40.5~63.2%が2細胞期以上へ,33.2~56.1%が4細胞期以上へ,20.0~33.8%が8細胞期以上へ18.5~30.4%が桑実期以上へ,4.1~25.4%が胚盤胞期以上へ発育した。また低率(2.1~3.7%)ながらも脱出胚盤胞も観察された。
  • 福井 豊, 手塚 雅文, 赤池 政彦, 町山 救郎, 小野 斎
    1987 年 33 巻 4 号 p. 181-187
    発行日: 1987年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    めん羊の季節外繁殖に使用するため,500mgプロジエステロン含有の自家製膣内スポンジを作製した。この膣内スポンジの発情誘起および分娩率に対する効果を検討するために,2つの野外試験を実施した。方法は,I) 60mgメドロキシプロジエステロン•アセテート(MAP)を含有した膣内スポンジ(MAPスポンジ•オーストラリア,アップジョン社製),II) MAP不含の同上の膣内スポンジに,500mgプロジエステロンを含有したもの,III) 自家製膣内スポンジに,500mgプロジエステロンを含有したもの,の3種の膣内スポンジを使用した。膣内スポンジの挿入期間は,12日間(実験1)または9日間(実験2)とし,除去後PMSG(妊馬血清性性腺刺激ホルモン)600IUを筋肉内注射した。発情発見時に,合成LH-RH(コンセラール)100μgを筋肉内注射し,その後6時間目に1回の自然交配を実施した。
    実験1において処置後5日間の発情誘起率は,1),II),III)でそれぞれ,100%,100%,94%であり,有意差はなかったが,500mgプロジエステロン含有の膣内スポンジでは(IIおよびIII),処置後から発情発見までの時間が有意に(Pく0.05)短かかった。分娩率は,それぞれ,85%,60%,57%であったが,有意差は認められなかった。実験2の発情誘起率は,88%,68%,68%であり,使用した膣内スポンジ間に有意差はなかった。分娩率は,32%,31%,33%と各群とも低率であったが,処置間に有意差は見られなかった。
    以上の成績から,500mgプロジエステロン含有の自家製膣内スポンジは,従来の合成プロジエステロン(60mgMAP)含有の膣内スポンジと同程度の効果が認められ,めん羊の季節外繁殖に充分,使用できるものと思われた。
  • 岩崎 説雄, 河野 友宏, 中原 達夫, 塩谷 康生, 福島 護之, 花田 章
    1987 年 33 巻 4 号 p. 188-192
    発行日: 1987年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    牛卵巣からの卵子の回収率を高めるために,屠場より採取した卵巣51個について,直径3-5mmの表層卵胞からの卵子(卵胞卵という)を卵胞液とともに吸引し,残りの卵巣組織をカミソリまたはおろし金による5処理法で磨砕して卵子(卵巣内卵子という)を回収した。回収卵子を卵丘細胞の付着状態により6型に分類し,さらに体外成熟および体外受精し,卵子の成熟能および受精能を検討した。
    卵胞卵は卵巣当たり9.4個回収され,このうち卵丘細胞が緊密に付着するA型卵子は56.4%を占めた。卵巣内卵子は卵巣当たり13.O-24.6個回収され,このうちA型は3.8-6.3個で13.4-38.3%を占めた。卵巣内卵子の回収総数とA型卵子数には相反関係があった。5処理法のうち,小突起をもつおろし金による処理でA型卵子の回収率は最高値を示した。本法では同時に卵子を含む直径の0.45-1.35mmの小卵胞が1卵巣当たり数個回収された。回収卵子の体外培養により,A型卵子の81.1%が成熟し,このうち63.3%が受精し,卵胞卵での成績に劣らない結果を示した。
    以上の結果より,牛卵巣に存在する直径5mm以下の小卵胞から,卵胞液の吸引と卵巣組織の磨砕により未成熟卵子が回収され,1卵巣当たり10個以上の正常成熟卵子が得られる可能性が示唆された。
  • 大浪 洋二, 菊池 元宏, 大沼 秀男
    1987 年 33 巻 4 号 p. 193-199
    発行日: 1987年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    卵胞発育の早い段階で排卵を誘起したあと,hCGを日量500IU排卵日から10日間注射して誘起排卵後の黄体形成状態を調べた。排卵誘起は黄体期の成牛に対しPGF analogue注射後16時間(I群:2頭),32時間(II群:2頭)にGnRH-analogueを注射して行った。その結果,I群およびII群4頭の黄体形成はいずれも不良で,HCGの黄体形成刺激効果はみられなかった。このことから,黄体形成不全の成因は排卵した卵胞のLH(hCG)に対する反応性が乏しいことによる可能性が推察された。
  • 松本 徹郎, 石渡 学, 山井 淳子, 山川 宏入, 近藤 ゆり, 川手 秀一, 尾川 昭三
    1987 年 33 巻 4 号 p. 200-205
    発行日: 1987年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    マウスの8細胞期~胚盤胞期の胚をVS液(Rail and Fahy, 1985)を用いてVitrificantion法で凍結した。そして融解後のsucrose 2段階希釈の胚生存性に及ぼす効果を調べた。
    8細胞期胚では,希釈法に関係なく良好な生存胚が得られたのにもかかわらず,桑実期胚から胚盤胞期胚では, sucrose 2段階希釈で得られた胚の発育率は, VS3段階希釈胚に比し,高い傾向にあることが認められた。 また,胚の発育ステージが進むほど, sucrose希釈の効果が大きいことがうかがわれた。
    桑実期胚のsucrose希釈胚29個の移植によって11匹の産子が得られた。
  • 砂川 政広, 笠原 民夫, 角田 龍司, 大津 昇三
    1987 年 33 巻 4 号 p. 206-208
    発行日: 1987年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    受卵(胚)牛の受胎性が高いと思われる移植時の黄体形状について検討する目的で49頭のホルスタイン種牛に移植を実施した。
    黄体形状は,移植時に手指の各指頭で容積の測定を行い,さらに弾力性と卵胞共存の有無で分類した。
    受胎成績は,黄体容積が母指頭大~薬指頭大(直径15~20mm),卵胞の共存がなく,黄体突起部下部周辺の弾力性が軟肉様の触感を呈する受卵(胚)牛群で受胎性が高く,37頭中23頭が受胎し,62.2%の受胎率であった。一方他の黄体形状が確認された受卵(胚)牛群の受胎性は低く,受胎率は8.3%にとどまり両群の受胎率に有意差(p<0.01)が認められ,血中P値についても同様に有意差(p<0.05)が認められた。
  • 青柳 敬人, 藤井 勝巳, 岩住 安晃, 和地 秀一, 福井 豊, 小野 斎
    1987 年 33 巻 4 号 p. 209-211
    発行日: 1987年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ウシの体外成熟培養卵子と前培養精子(カフェイン10mM,イオノホア0.1μMを含む修正PBS溶液で4時間)を偽妊娠家兎の卵管内に同時に移植し,48時間後の分割率を調ぺた。1404個の成熟培養卵子を50本の家兎卵管に移植し,800個の卵を回収した(回収率,57.0%)。回収卵の2~8細胞期への分割率は4.6%(37/800)であった。同一実験であっても,使用家兎間での分割率に変動(最大で0~36.4%)を認めた。
feedback
Top