以上數章ニ亘り述ベシ余ノ實驗ヨリ考フルニ次ノ如キ事ヲ首肯シ得可シ。
1, 甲状腺摘出ハ免疫性菌凝集素産生ニ對シテハ既ニ述べシ述疫性溶血素, 血球凝集素, 沈降素等ニ於ケル如ク抑制的ニ作用スル事ナシ.而シ乍ラ一旦産生セラレタル免疫性菌凝集素ノ存續期間ヲ延長セシム.
1, 免疫完成後甲状腺ヲ摘出スルモ免疫性菌凝集素産生ニ對シ何等影響スル所ナシ.
1, 甲状腺物質試食ハ免疫性菌凝集素産生ニ對シテ影響セズ.而シ乍ラ一旦産生サレタル免疫性菌凝集素ノ存續期間ヲ短縮ス.
1, 免疫完成後甲状腺物質ヲ試食セシムルモ免疫性菌凝集素産生ニ對シ影響スル所ナシ.
1, 甲状腺摘出後甲状腺物質試食ヲ行ヒシニ甲状腺摘出ニヨル影響ハ畧々之ヲ防グ事ヲ得タリ.
1, 各個體ノ感受性ノ差ニヨリ同一群ニ於テモ甲状腺摘出並ニ甲状腺物質試食ニヨル影響ニ多少ノ變動アルヲ認ム.

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1, 甲状腺摘出ハ正常溶血素ヲ明ニ減弱セシム.而シテ個體ニヨリ復舊スル迄ノ期間ハ種々ナリ.
1, 甲状腺摘出ニヨル正常溶血素ノ減弱ハ甲状腺物質試食ニヨリ略々之レヲ防グヲ得.
1, 單ニ甲状腺物質ヲ試食セシムルノミニテハ正常溶血素ハ影響ヲ受ケズ.
1, 甲状腺機能ハ溶血性補體量ニ影響セズ.
1, 甲状腺摘出ハ正常菌凝集素ヲシテ明ニ減弱セシム.而シテ其正常ニ復スル迄ノ期間ハ個體ニヨリテ一定セズ.
1, 甲状腺摘出ニヨル正常菌凝集素ノ減弱ハ甲状腺物質ヲ試食セシムル事ニヨリ略々防グ事ヲ得.
1, 單ニ甲状腺物質ヲ試食セシムルノミニテハ正常菌凝集素ハ何等ノ影響ヲ受クルコトナシ.

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本編ノ研究ニ於テ余ガ行ヒタル檢査ノ要旨ヲ記スレバ次ノ如シ.
1, 聚落ノ一般性状トシテハ特ニ記載スベキガ如キ變異ノモノナケレドモ, 著明ニ色素ヲ産生スル事ハ前編ニ於ケル球菌ノ色素産出ヨリモ旺盛ナラズ, 而シテ無色透明ノ露滴状ノモノ多シ.
2, 本菌種ノ大多數ハ長サ約0.5μ幅約0.3μノモノニシテ他ノモノハ之ヨリモ稍大ナリ.
3, ぐらむ染色性陽性ノモノハ23中28即チ85%, 陰陽不確實ノモノ1即チ3%陰性ノモノ4即チ12%ナリ.
4, 芽胞ヲ有スルモノ1即チ3%, 有セザルモノ32即チ97%ナリ.
5, 個有運動ヲナスモノ5即チ15%, ナサザルモノ28即チ85%ナリ.
6, 溶膠作用陽性ノモノ2即チ6%, 陰性ノモノ31即チ94%ナリ.
7, 色素ヲ産出スルモノニツキ調ブレバ, 枸櫞色ノモノ10即チ30%, 枸櫞黄金色ノモノ2即チ6%, 緑色ニシテ螢光ヲ發スルモノ2即チ6%, 白色ノモノ4即チ12%, 無色透明ニシテ露滴状ノモノ13即40%ナリ.
8, 馬鈴薯上ニ發育セザルモノ6即チ18%アリ.而シテ發育スルモ色素産生作用ハ餘リ著明ナラズ.
9, いんどーる反應ヲ呈スルモノハ1モナシ.
10, 牛乳凝固作用陽性ノモノ2即チ6%, 陰性ノモノ31即チ94%ナリ.
11, 溶血作用陽性ノモノ5即チ15%, 陰性ノモノ28即チ85%ナリ.
12, らくむす乳清反應陽性ノモノ21即チ64%, 陰性ノモノ12即チ36%ナリ.
13, 1%葡萄糖加寒天培養基中ニテ瓦斯形成作用ヲ營ムモノ1モナシ.
14, べぷとん水中ニテハ皆發育シ, 同培養基ヲ溷濁セシムルモノハ瀰漫性ニナス, 沈渣ハ大多數沈澱ヲナスト雖モ中ニハ雲絮様ノモノヲ作ルモノ1即チ3%アリ.菌膜ヲ形成スルモノ5即チ15%アリ.而シテ本培養基ニテ培養セシメタルモノヲ單染色シテ鏡檢スルニ著明ニ連鎖状ヲナスモノナシ
15, 糖類分解作用檢査ノ結果
(イ) あらびのーぜ分解陽性ノモノ25即76%, 陰性ノモノ8即チ24%ナリ,
(ロ) きしろーぜ分解陽性ノモノ27即チ82%, 陰陽不確實ノモノ12即チ9%, 陰性ノモノ3即チ9%ナリ.
(ハ) できすとろーぜ分解陽性ノモノ31即チ94%, 陰性ノモノ2即チ6%ナリ.
(ニ) がらくとーぜ分解陽性ノモノ21即チ64%, 陰陽不確實ノモノ1即チ3%, 陰性ノモノ11即チ33%ナリ.
(ホ) れーう゛ろーぜ分解陽性ノモノ27即チ82%, 陰性ノモノ6即チ18%ナリ.
(ヘ) まんのーぜ分解陽性ノモノ25即チ76%, 陰性ノモノ8即チ24%.
(ト)さっかろーぜ分解陽性ノモノ21即チ64%, 陰性ノモノ12即チ36%ナリ.
(チ) まるとーぜ分解陽性ノモノ2即チ73%, 陰陽不確實ノモノ1即チ3%, 陰性ノモノ8即チ24%ナリ.
(リ) らくとーぜ分解陽性ノモノ13即チ39%, 陰陽不確實ノモノ2即チ6%, 陰性ノモノ18即チ55%ナリ.
(ヌ) らっふぃのーぜ分解陽性ノモノ19即チ58%, 陰陽不確實ノモノ1即チ3%, 陰性ノモノ13即チ39%ナリ.
(ル) いぬりん分解陽性ノモノ5即チ17%, 陰性ノモノ28即チ83%ナリ.
(ヲ) まんにっと分解陽性ノモノ19即チ58%, 不確實ノモノ2即チ6%, 陰性ノモノ12即チ36%ナリ.
(ワ) いそずるしっと分解性陽性ノモノ14即チ42%, 陰性ノモノ19即チ58%ナリ.

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本編ノ研究ニ於テ余ガ行ヒタル諸檢査ノ要旨ヲ記スレバ左ノ如シ.
1, 聚落ノ性状ニ於テハ特記スベキ事ナシ.
2, 本桿菌ノ大多數ハ長サ1.5-2.5μノ桿菌ナリ.
3, ぐらむ、染色ハ陽性ノモノ30中22即チ73%, 陰性ノモノ8即チ27%ナリ.
4, 芽胞ヲ有スルモノ18即チ60%, 有セザルモノ12即チ40%ナリ.
5, 個有運動ヲナスモノ24即チ80%, ナサザルモノ6即チ20%ナリ.
6, 溶膠作用陽性ノモノ7即チ23%, 陰性ノモノ23即チ77%ナリ.
7, 色素ヲ産生スル事ハ前編ノ球桿菌ヨリモ稍不著明ナリ.即チ淡枸櫞色ノモノ11即チ37%, 枸櫞黄金色ノモノ3即チ10%, 黄褐色ノモノ3即チ10%, 枸櫞色ノモノ1即チ3%, 白色ノモノ2即チ6%, 無色透明ノモノ10即チ33%ナリ.
8, 馬鈴薯上ニ發育セザルモノナシ.
9, いんどーる反應ヲ呈スルモノナシ.
10, 牛乳凝固作用陽性ノモノ九即チ30%, 陰性ノモノ21即チ70%ナリ.
11, 溶血作用陽性ノモノ12即チ40%, 陰性ノモノ18即チ60%ナリ.
13, らくむす乳清反應陽性ノモノ23即チ77%, 陰性ノモノ7即チ33%ナリ.
13, 瓦斯形成作用ヲ營ムモノナシ.
14, ぺぷとん水中ニテハ皆發育シ, 同培養基ヲ溷濁セシムルモノハ皆瀰漫性ニ於テス, 雲絮様浮游物ヲ作ルモノーアリ, 菌膜ヲ形成スルモノナシ, 而シテ本培養基ニ培養セルモノヲ單染色ニテ鏡檢スルニ著明ニ連鎖状ヲナスモノナシ.
15, 糖類分解作用檢査ノ結果
(イ) あらぴのーぜ分解陽性ノモノ30中19即チ63%, 陰性ノモノ11即チ37%ナリ.
(ロ) きしろーぜ分解陽性ノモノ23即チ77%, 陰陽不確實ノモノ2即チ7%陰性ノモノ5即チ16%ナリ.
(ハ) できすとろーぜ分解陽性ノモノ23即チ77%, 陰性ノモノ7即チ23%ナリ.
(ニ) がらくとーぜ分解陽性ノモノ13即チ43%, 陰陽不確實ノモノ1即チ3%, 陰性ノモノ16即チ53%ナリ.
(ホ) れーう゛ろーぜ分解陽性ノモノ24即チ80%, 陰性ノモノ6即チ20%ナリ.
(ヘ) まんのーぜ分解陽性ノモノ22假チ73%, 陰陽不確實ノモノ1即チ3%陰性ノモノ7即チ23%ナリ.
(ト) さっかろーぜ分解陽性ノモノ16即チ53%, 陰性ノモノ14即チ47%ナリ.
(チ) まるとーぜ分解陽性ノモノ22即チ73%, 陰性ノモノ8即チ27%ナリ.
(リ) らくとーぜ分解陽性ノモノ5即チ17%.陰陽不確實ノモノ1即チ3%, 陰性ノモノ24即チ80%ナリ.
(ヌ) らっふいのーぜ分解陽性ノモノ18即チ60%, 陰陽不確實ノモノ1即チ3%, 陰性ノモノ11即チ37%ナリ.
(ル) いぬりん分解陽性ノモノ5即チ17%, 陰性ノモノ25即チ83%ナリ.
(オ) まんにっと分解陽性ノモノ13即チ43%, 陰性ノモノ17即チ57%ナリ.
(ワ) いそずるしっと分解陽牲ノモノ6即チ20%, 陰性ノモノ24即チ80%ナリ.

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先ニ余ハ本論文第2編, 第3編及第4編ニ於テ死體ノ腐敗セル種々ナル臓器ヨリ分離培養セル球菌, 球桿菌及桿菌130株ニツキ檢シタル形態學的及生物學的性状ヲ詳細ニ記載セリ.而シテ其記載タルヤ檢査成績ヲ可及的詳記スルヲ以テ主眼トシタルガ故ニ些カ煩雜タルヲ免レザリキ.依デ余ハ今成績ノ要項ヲ摘録シ, 之ヲ總括的ニ表示セン.之ニ依テ檢査成績ハー目瞭然タルヲ得ベシ.即チ別表ノ如シ.

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以上第3章及第4章ニ於テ述ベタル檢査成績ヲ簡單ニ總括セバ別表ノ如シ. (別表參照)
備考欄ニ記載セル菌名ハ松下禎二博土著寄生物性病論第2卷, Lehmann-NeumannノBakteriologie及 Mignla ノ System d. Bakterienヲ參照シテ余ガ檢出セル菌ニ比較的近似セルモノ又ハソレト推定セラル、モノ、名ナリ.尚本邦ニ於テ最近多々見ガ東京帝大醫學部徽菌學教室室ニ於テKochノあっぷじっつめとーでニヨリ空中菌ヲ檢索シテ, 其結果B. aerophilus, B. bipolaris, B. emulsinus, B. erythrosporus, B. goniosporus. B. loxosus, B. mesentericus, vulgaris, B. mycoides, B. petiolatus, B. polymorphus, B. ramosus, B. squamiformis, B. subtilis, M. candidus, M. pyogenes albus, M. zinnobarinus等ノ外4種ノ菌類 (Pilze) ヲ分離シタリ.而シテ余ガ分離セルモノト一致セルハM. zinnobarinusノミニシテ, 他ハ悉ク一致セザルモ, カ、ルハ同氏ノ檢査方法ト余ノ檢索方法ト同一ナラズ, 又檢索塲所モ同一ナラザルニヨルナルベシト信ズ.

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