平衡機能検査上, 臨床的に実用化できる H-OKN, V-OKN検査法を確立するためにJung型方式の加速度視運動性刺激を用いて, 正常人の反応の特徴を検討し, 2,038症例の反応態度と中枢神経系に対する診断的意義を調べるために脳腫瘍97例の分析を行ない次のような結論を得た。
1) 正常人では, H-OKNに比較するとV-OKNの反応は眼振数, MES, OALともやや低いが, 全般的にはH-OKN とほぼ同様にリズミックな反応を示す。
2) 正常人の判定規準により, 眩暈・平衡障害例2,038名のOKN検査を行なったところ484名 (23.8%) に異常所見を検出した。摘発率の高い順から, V-OKN, H&V-OKN, H-OKN となった。
3) OKN 検査の中枢神経系疾患に対する診断的意義を調べるため, 脳腫瘍を選び病巣部位とOKNのsystem別に現われた所見を検討した。大脳腫瘍では47.8%に異常を認め, 中脳・松果体腫瘍は90%, 橋脳・脳幹腫瘍94.7%, 小脳橋角部85.7%, 小脳腫瘍58.3%, 聴神経腫瘍68.9%に異常所見も検出し, 極めてOKN反応の障害が著明に出現することが判明した。
4) 中脳, 松果体腫瘍ではV-OKNの障害, 橋脳・脳幹・小脳橋角腫瘍では両方のsysternの障害を示すことが多く, 小脳・聴神経腫瘍ではH-OKNの障害が主体となる。
5) OKN 検査異常例中ET検査で異常反応を示した例は65.4%で, 反応態度に差のあることが分った。
6) 以上より視運動性眼振検査には, 単にH-OKN検査だけでなくV-OKN検査も加えて行なうことが必要であり, 両者の総合判定により病巣局在診断の可能姓が高くなることを述べた。
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