現在多くの国・地域が生物多様性オフセット制度の導入を検討している。米国の湿地ミティゲーション制度は生物多様性オフセットの先進的例であり,多くの国・地域が導入に際し参照している。しかし,その制度の発展・変遷の経緯に関する分析は少ない。当制度が過去にどのような課題に対処してきたのかを明らかにすることは,先進事例における教訓を活かす上で重要であると言える。 本研究は,内容分析によって米国の湿地ミティゲーション制度に関する公式文書における利用単語の出現頻度と出現回数を生態学的効果,経済的・運用上の効率性,社会的公平性の視点から時系列的に分析し,制度の焦点の変遷を定量的に評価した。その結果,制度が近年より生態学的効果や経済的・運用上の効率性といった課題により焦点を当てている反面,社会的公平性に関する議論は少ない現状が明らかとなった。 また,本研究では,内容分析による制度変遷の定量的評価という新しい分析手法を採用した。当手法によって制度変遷を可視化し,客観的に評価することができたが,課題も明確になったため,今後試行錯誤による改善が期待される。
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら