1. 被膜および梁柱の洞内皮下には,線維性結合組織との境界面に,極めて薄い銀好性細線維性網工が存在する.このものは,洞内皮の光顕的基底膜に当たる.
2. 細網線維の銀好性は,その物質内に均等に分布するのではなく,最表層,即ち細網細胞との境界面に限局している.この結果,銀染細線維は,横断面では表面銀黒,側面観では黒い輪郭を示す.細網線維の表面銀黒部は,上述洞内皮基底膜と全く同じ構造を有し,しかも細網線維が被膜または梁柱と結合する処で,両者に互いに移行し合う.従って,細網細胞には,このものと細網線維との開長靴下のようにおゝう,光顕的基底膜が存在することになる.
3. 細網線維の表面銀黒内腔には,本来,被膜や梁柱の線維性結合組織と一続きの組織要素が存在しうる.このようなものとしては,膠原線維が最も優勢でしばしば弾性線維,このほかまれならず細網線維の会合点(分岐点)に固定細胞が現わる.この細胞は,表面銀黒部を隔てゝ細網細胞と反対の側,つまり線維性結合組織側にあり,この位置と形状から,線維細胞を疑われるのに最も相応しい.
4. リンパ組織表面のリンパ洞壁は,細網線維の立体的網工が平面的に濃縮したものではなく,それがリンパ洞とリンパ組織の間で大規模に展開したものであり,その網目は,自由細胞通過の際一過性に生ずると思われる洞壁開口に相当する.
5. 洞内皮基底膜およぴ細網線維表面の銀好性は,そこに存在する微細線維が銀好性を有することに基づく.この銀好性細線維は,収斂しながら,付近の膠原原線維束に直接移行する.
6. 細網,膠原両線維の直接的結合部で両線維の物質的異同を論ずるのは無意味である.細網線維と呼ばれている部分は,同じ膠原要素の表面を,銀好性細線維網工(表面銀黒)がおゝったものにほかならない.
7. 細網線維が,よく言われるように,太さの増大と共に銀好性を弱め,膠原要素様色調を強く示すのは,一般に太さと共に内部の膠原要素量が増し,その色調が表面銀黒の目立ち方をりようがすることに基づく.
8. いわゆる細網線維は,Mallが行なったように,膠原線維に並置される結合組織線網維ではない.それは,本来,梁柱と全く同等な,たゞ規模の小さな結合組織性構造物に過ぎない.
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