四塩化炭素の反復注射によりシロネズミに肝硬変を作り,肝の線維化が進行する過程でみられる肝の網内系細胞の態度を組織化学的に観察した。
中心静脈周囲および隣接する中心静脈を相互に結ぶ所謂Kollapsstrasseに沿って小壊死巣が散在し,この部分に集簇したKupffer細胞では細胞内に多数のPAS陽性顆粒がみとめられ,lysosomeに局在するacid phosphatase, β-glucronidase活性も強く,これらの細胞による活発な貪食が窺われる。四塩化炭素投与を中止すると,これらの細胞は比較的速やかに減少する。これらが局所の線維化にはたす可能性について議論を加えた。
生化学的に肝の酸性ムコ多糖体の変動をみると,四塩化炭素投与期間の長短により増加するムコ多糖体分劃が異なり,3週投与群ではヒアルロン酸とヘパリチン硫酸が著しく増している。12週投群ではこれらの分劃は減少し始めるが,なお対照より増している。この時期にはコンドロイチン硫酸が増加している。
線維化が進むと,中心静脈を互に結ぶ結合織の隔壁の部分にトロイジンブルー染色でメタクロジーが認められる。alkaline phosphatase活性をみると,グ鞘からのびた結合織の部分では線維芽細胞に明らかな活性を認めるが,中心静脈を相互に結ぶ結合織の隔壁の部分では典形的な線維芽細胞を認め難く,本酵素活性もみとめられない。この隔壁の部分にみられる細胞がKupffer細胞あるいはDisse腔細胞に由来し,局所で酸性ムコ多糖体の産生を行なう可能性が示唆される。これについて議論を加えた。
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