本稿の目的は建設産業におけるアスベスト問題に対して、被害者支援を行っている労働組合の取り組みの現状と課題を明らかにすることである。

調査方法は建設産業に従事している「一人親方」である個人事業主が加入する労働組合の職員を対象にフォーカスグループインタビュー調査を行い、その内容を定性的コーディングで分析した。

その結果、労働組合は組合員に対するアスベストの危険性に関する啓発活動やアスベスト関連疾患の早期発見に努めていた。しかし被害者の生活課題に対する相談支援、医師との連携が不十分であることが明らかになり、ソーシャルワーカーが担うべき役割が示唆されるものであった。

今後は組合員が置かれている複雑な状況や時間の経過からの変化を明らかにするために、組合員に対する調査研究を行い、本稿の検証を重ねていく必要がある。