世界のサンゴ礁は度重なるサンゴの白化被害により疲弊が著しく,日本においても例外ではない.被害はサンゴ群集で優占するミドリイシ類に集中し,地理的には琉球列島の南琉球でその被害が顕著で,日本のサンゴ礁の多くを占める裾礁の地形区分では礁池及び礁斜面上部のサンゴ群集に被害が顕著である.
本研究では気候変動に伴い今後被害の拡大が予想される中琉球の裾礁に焦点を当て,衛星画像とドローン撮影による礁池のサンゴ群集の調査と地元ダイビングショップなどの聞き取りから礁斜面や湾内などで白化被害を免れて生存する大規模群落・群体の現地調査を行った.礁池の調査ではミドリイシ類の大規模群落は見出すことができないが,ユビエダハマサンゴやコモンサンゴ類で規模の大きな群落が見出された.これらは白化耐性の強い種であることから,すでに多くを失ったミドリイシ類に代わって今後も礁池内の生物群集の骨格として重要である.また,特定の地域において礁斜面でミドリイシ類の大群落が確認され,礁斜面上部でもハナヤサイサンゴ類で大群落が見られるなど,一定の環境下で白化を免れたサンゴ群集の生存が確認された.
今後はこれらの特定地域から得られたサンゴ種のサンプルから生物学的検討を進めるとともに,その環境特性を検討し,状況に応じた適応的な保護の提言を行う.
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