精神・心理領域理学療法学
Online ISSN : 2758-6103
最新号
第2号
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原著
  • 甲田 宗嗣
    原稿種別: 巻頭言
    2025 年2 巻1 号 p. 1
    発行日: 2025/03/01
    公開日: 2025/03/06
    ジャーナル フリー

    『精神・心理領域理学療法学』第2巻第1号の発行にあたり、ご挨拶申し上げます。本誌をご覧いただきました皆様に心より感謝申し上げます。

    本号には、2本の原著論文が掲載されております。いずれの論文も、精神・心理領域における理学療法の発展に資する重要な知見を提供しており、読者の皆様の臨床や研究活動に役立つものと確信しております。

    さて、今年度、日本精神・心理領域理学療法研究会は一般社団法人化を経て、名称を日本精神・心理領域理学療法学会へと変更する運びとなりました。この法人学会化は、本研究領域のさらなる発展と普及を目指すものであり、精神・心理領域における理学療法の専門性を一層深めることを目標としています。

    法人化にあたり、私たちは本学会の研究領域を次のように明確に規定いたしました。

    ● 精神障害と身体障害の重複障害に対する理学療法

    ● 精神障害を有する人に対する身体機能、活動の評価

    ● 精神障害を有する人の身体機能障害、活動能力低下の予防

    ● 精神障害やメンタルヘルスの不調に対する理学療法の基礎的研究

    ● 精神障害を有する児・者の社会参加、就労支援

    ● 労働者や学生のメンタルヘルスと身体活動や運動習慣との関連

    これらの領域は、精神障害や心理的課題を抱える方々に対する理学療法の可能性を広げるだけでなく、社会全体の健康向上に寄与するものであると考えております。

    なお、法人学会化に伴い学会名は変更となりますが、本誌『精神・心理領域理学療法学』の名称はそのまま継続して使用いたします。本誌は、今後も精神・心理領域における理学療法の発展を支える場としての役割を果たしていく所存です。

    最後になりますが、本号の発刊にあたり、多大なるご尽力をいただいた著者の皆様、査読者の皆様、編集委員会の皆様に心より御礼申し上げます。本誌が引き続き皆様の研究活動の一助となることを願い、今後ともご支援とご指導を賜りますようお願い申し上げます。

  • 菅井 康平, 対馬 栄輝, 笹嶋 寿郎, 下村 辰雄
    原稿種別: 研究論文
    2025 年2 巻1 号 p. 2-10
    発行日: 2025/03/01
    公開日: 2025/03/06
    ジャーナル フリー

    【目的】認知症患者では認知機能や身体機能の低下,身体拘束や多剤併用による薬剤副作用など様々な因子によって行動制限が生じる.これらの因子は運動機能や日常生活活動(Activities of Daily Living ; 以下,ADL)に影響を及ぼすが,歩行自立度に関連する因子は未だ明らかではない.本研究では認知症と臨床診断された入院患者における歩行自立に関連する因子を明らかにすることである.

    【方法】対象者は認知症患者で精神科病棟に入院して理学療法が行われた98例で,退院時の病棟歩行自立度に基づいて歩行自立群63例と歩行非自立群35例の2群に分けて解析した.従属変数を歩行自立度,独立変数を運動機能やADLに影響を及ぼす因子として多重ロジスティック回帰分析を行った.

    【結果】歩行自立群はShort Physical Performance Battery(以下,SPPB),抗認知症薬の服薬率が非自立群と比較して有意に高かった(p<0.05).多重ロジスティック回帰分析の結果,Mini-Mental State Examination,SPPB,抗認知症薬,睡眠薬,抗精神病薬,抗うつ薬,抗パーキンソン病薬の合計薬剤数が有意に関連する因子として抽出された.

    【結語】認知症の入院患者において歩行自立度を評価する際は,認知機能,下肢機能,服薬状況を把握する重要性が示唆された.

  • 桑原 裕也, 京極 真, 寺岡 睦, 森下 元賀
    原稿種別: 研究論文
    2025 年2 巻1 号 p. 11-22
    発行日: 2025/03/01
    公開日: 2025/03/06
    ジャーナル フリー

    【目的】回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)に入院する高意欲患者と低意欲患者を対象に意欲に関わる要因を質的に調査し,その要因間の関係性を明らかにすることとした.

    【方法】対象は回復期リハ病棟1施設に入院する患者とした.方法は構造構成的質的研究法を用いた.高意欲患者7名と低意欲患者7名にインタビューを行い,Steps for Coding and Theorizationにて分析した.

    【結果】高意欲群では,患者要因,セラピスト要因,第三者要因の相乗効果によって意欲に影響し,意欲低下要因である,入院による負の体験を減少させている構造であった.低意欲群では,患者要因,セラピスト要因,第三者要因がリハの意欲に対して相互に影響を及ぼし,意欲促進要因が打ち消されていた.

    【結論】両群ともにリハビリテーションに対する意欲は,患者個人のみに帰属しているものではなく,その患者自身とその周辺の人々,患者を取り巻く状況による相互作用性によって成立しているものであることが分かった.

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