精神・心理領域理学療法学
Online ISSN : 2758-6103
最新号
第3号
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巻頭言
  • 加賀野井 聖二
    原稿種別: 巻頭言
    2026 年3 巻1 号 p. 1
    発行日: 2026/03/19
    公開日: 2026/03/20
    ジャーナル フリー

    本誌をご覧いただいている皆様に、心より御礼申し上げます。

    精神・心理領域における理学療法の歩みを振り返ると、2010年の部門発足以来、私たちは多くの仲間とともに、理解の少ない環境の中で実践を積み重ね、少しずつ領域を切り拓いてきました。自然災害や社会情勢の変化、そしてコロナ禍といった大きな出来事を経て、精神医療における身体アプローチの重要性はむしろ明確になり、私たちの活動は着実に広がりを見せております。

    近年の診療報酬改定では、認知症治療病棟や精神科療養病棟、精神科救急においても理学療法が制度的に位置づけられ、精神障害を有する方々の身体機能・活動に焦点を当てる意義が広く認められるようになりました。また、働く人々や学生のメンタルヘルスへの関心が高まる中、身体活動や運動療法が果たす役割は、医療の枠を超えて社会全体へと広がりつつあります。

    とりわけ、精神障害を有する方々の「就労支援」は、今後の重要なテーマの一つです。身体機能や活動能力の向上は、単に日常生活の改善にとどまらず、働く力の回復や職場での持続的な参加を支える基盤となります。理学療法士が身体面から就労を支援する意義は大きく、医療・福祉・労働の各領域と連携しながら、より包括的な支援を構築していくことが求められています。

    こうした背景のもと、本学会は専門性の深化と学術基盤の強化を目指し、本誌の発刊という大きな一歩を踏み出しました。本誌では、精神疾患を有する方への理学療法、メンタルヘルスの維持・向上に寄与する身体活動、社会参加や就労支援に関する取り組みなど、多様な視点から学術的知見を蓄積していくことを目指しています。

    本号に掲載された研究は、精神・心理領域理学療法の可能性を広げる重要な成果です。研究者・臨床家の皆様の不断の努力に深く敬意を表するとともに、本誌が皆様の実践と研究をつなぐ場として発展していくことを願っております。

    最後に、本誌の発刊にご尽力いただいた著者、査読者、編集委員会の皆様に心より感謝申し上げます。精神・心理領域理学療法の未来をともに創り上げていくため、今後とも温かいご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

原著
  • 中口 拓真, 北原 佑磨, 安丸 直希, 石本 泰星, 星野 好則
    原稿種別: 研究論文
    2026 年3 巻1 号 p. 2-11
    発行日: 2026/03/19
    公開日: 2026/03/20
    ジャーナル フリー

    【目的】アルツハイマー病患者における買い物リハビリテーション(Shopping Rehabilitation;SR)の効果を検証すること。

    【方法】アルツハイマー病患者24名をSR群と通常ケア群に無作為に割り付け,週1回12週間介入を行った。主要アウトカムはShort Physical Performance Battery(SPPB),副次アウトカムはAlzheimerʼs Disease Assessment Scale(ADAS)とCouncil on Nutrition Appetite Questionnaire(CNAQ)とした。

    【結果】SR群と通常ケア群の平均差は,SPPB(0.88, p=0.04)とCNAQ(4.10, p=0.03)で有意な改善を示した。ADASに有意差は認められなかった。

    【結論】SRはアルツハイマー病患者の身体機能や食欲を改善する可能性がある。

  • 市川 由希穂, 豊島 晶, 池田 直人, 瀬崎 唯, 横井 悠加, 森下 勝行
    原稿種別: 研究論文
    2026 年3 巻1 号 p. 12-21
    発行日: 2026/03/19
    公開日: 2026/03/20
    ジャーナル フリー

    【目的】認知的方略の違いによる感情と機能的自立度の関連を明らかにし,認知的方略に基づいたリハビリテーション支援の可能性を探索することを目的とした.

    【方法】対象は回復期リハビリテーション病棟入院患者29例とし,入院時に認知的方略尺度,入退院時に日本語版PANAS・FIMを評価した.認知的方略に基づき楽観主義群と悲観主義群に分類し,日本語版PANAS・FIMの群間・群内比較と相関を検討した.さらに,在院日数の群間比較と,日本語版PANAS・FIMとの相関を確認した.

    【結果】楽観主義群は入院時にポジティブ感情が高く,ネガティブ感情は低い傾向であった.退院時FIMは楽観主義群が悲観主義群より有意に高かった(p = 0.005).在院日数は楽観主義群が短かった.

    【結語】楽観主義的方略の患者は,ポジティブ感情を維持しつつ,機能的自立度の改善が良好であり,早期自宅退院に寄与することが示唆された.

  • 足立 睦未, 今田 健
    原稿種別: 短報
    2026 年3 巻1 号 p. 22-31
    発行日: 2026/03/19
    公開日: 2026/03/20
    ジャーナル フリー

    【目的】運動イメージの評価が自宅退院後早期の活動範囲を予測する指標として用いることが出来るか明らかにするために,検者内信頼性,属性による特性,退院後早期の活動範囲との関連を調査した。

    【方法】対象は,回復期病棟に脳卒中罹患で入院した25名。10m快適,最大歩行時間の予測と実測時間を計測し除したM/A比を運動イメージ評価として算出した。活動範囲は退院1ヶ月後に個人の生活空間の広がりを評価する指標であるLSAで評価した。属性はそれぞれ群間比較を行った。

    【結果】M/A比は高い信頼性が得られ,退院1ヶ月後のLSAとM/A比は関連性を認めた。自己の歩行能力を過大評価している者は活動範囲が狭くなった。属性は前期高齢者群と後期高齢者群,歩行補助具有群と無群で有意差を認めた。

    【考察】運動イメージ評価のM/A比は退院後の活動範囲を予測する一助となることが示唆されたが,属性による影響があると考えられた。

短報
  • 濱田 賢二, 松本 直人
    原稿種別: 短報
    2026 年3 巻1 号 p. 32-36
    発行日: 2026/03/19
    公開日: 2026/03/20
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は,運動器疾患を併存した統合失調症患者に対して,身体リハビリテーション(以下,身体リハとする)が日常生活活動(以下,ADLとする)能力に与える影響を,Barthel Index(以下,BIとする)とFunctional Independence Measure(以下,FIMとする)の2つの評価尺度を用いて明らかにすること.

    【方法】2021年4月から2022年3月に当院へ入院し身体リハ依頼があった357例のうち,運動器疾患を併存した統合失調症患者35名を対象とした.精神疾患の分類にはICD-10を用いた.身体リハ前後のADL能力をBIおよびFIMで評価した.統計解析には対応のあるt検定を用い,有意水準は5%とした.

    【結果】対象者の基本属性を表1に示す.対象者は計35名であり,男性22名(62.9%),女性13名(37.1%)であった.平均年齢は61.1歳(±11.9),平均身長は162.3 cm(±10.1),平均体重は59.2 kg(±17.2),平均BMIは22.4(±5.4)であった.全例が統合失調症の診断を有しており,運動器疾患を併存している.運動器疾患の発症からリハビリテーション開始までの期間の中央値は13.2日[1.0-23.5],リハビリテーションの実施期間の中央値は103.5日[56.5-160.0]であった.BIの平均値は身体リハ開始前が65.6±30.0点,終了時が81.3±21.1点であり,有意な向上(p<0.001)が見られた.FIMの平均値も同様に,開始前が90.1±28.9点,終了時が104.3±21.1点であり,有意な差(p<0.001)が確認された.

    【結語】統合失調症に運動器疾患が併存した患者に対する身体リハは,ADL能力の向上に有益な影響を与える可能性が示唆された.

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