小児のアルコール使用症の病態や経過は,その国の社会的・文化的背景によってかなり異なると考えられており,その社会的・文化的背景は,家族,仲間との関係,併存する精神疾患などの要因を含めて複雑である.小児のアルコール使用症に対するエビデンスに基づく標準的な治療はある程度確立されているが,実際の運用は国によって異なり,国内の治療の実態は不詳である.
本症例は小学校 6 年生のときから飲酒が認められていたが,積極的な介入がないままに飲酒を続け,中学校 3 年生のときに不眠を主訴に初めて精神科を受診し,幻覚と被害関係妄想が認められたことから統合失調症と診断された.抗精神病薬による治療では幻覚と被害関係妄想は改善しなかったが,精神科病棟に入院した際に飲酒を中止し幻覚と被害関係妄想が改善した.経過からアルコール使用症と診断されたが,一般に成人のアルコール使用症の治療に利用できる社会資源(集団精神療法)を利用することは難しく,退院後も飲酒行動は持続し,アルコール離脱による痙攣発作が出現し 2 回目の入院となった.2 回目の入院では家族療法を導入し,アルコール使用症は改善した.
このような症例を 1 例の報告であっても学術的に蓄積し,国内における小児のアルコール依存症の治療法を検討することには価値があるだろうと考えた.
抄録全体を表示