近年、特に先進国においては少子高齢化が急速に進行しており、それに伴い高齢者向けの生涯教育のニーズが増えつつある。しかしながら、高齢者向けの生涯教育に関する研究、とくに天文学を含む自然科学をテーマとした教育研究については、管見の限りあまり進んでいない。高齢者の学習は、より若い世代の学習とは異なり、他者とのつながりの再構築や、やがて訪れる死への準備が学習のニーズにあるといわれている。本論文では、高齢者学習のニーズを踏まえ、天文学がどのような学習ニーズに適合し、天文教育がどのように応えていくかを検討する。高齢者を対象としたアンケート調査により、天文学は生涯学習を続ける一般的な高齢者の中でも、ニーズが高いことが示唆された。とくに、新しい知識の吸収に積極的な高齢者にとって、天文学は魅力的な学問領域であることが示された。一方で、天文学は、従来型高齢者学習科目の学習ニーズであった「他者とのつながり」や「実生活の改善」などを求める学習者には魅力的とは言えない可能性が示唆された。また，高齢者学習に特有な、悠久なものとのつながりを希求する「超越ニーズ」と天文学との関連も議論する。

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