富山大学医学会誌
Online ISSN : 2758-819X
Print ISSN : 1883-2067
17 巻, 1 号
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就任講演
  • 清水 忠道
    2007 年 17 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2007年
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル フリー
     アトピー性皮膚炎は遺伝的背景を有し,かつ慢性再発性の湿疹性病変を主症状とする皮膚疾患である。乳幼児のみならず,近年では成人の治療に難渋する症例が増加しており,社会的にも最も注目されている皮膚疾患の一つである。しかしながら,重要な課題であるにもかかわらずその病態の解明はあまり進んでいない。マクロファージ遊走阻止因子(macrophage migration inhibitory factor ; MIF)は炎症性サイトカインの一つである。MIFの機能は多岐にわたり,皮膚では増殖の盛んな基底細胞にMIFは強く発現している。MIFは成長因子としても重要な生理機能を有し,皮膚創傷治癒にMIFは重要な役割を果たしている。またMIFは多くのアレルギー性疾患や炎症において症状を増悪させる因子として働いており,特にアトピー性皮膚炎患者の血清中や病変部表皮においてMIFは強く発現している。MIF-DNAワクチン療法は従来の中和抗体療法に比べその有用性は多大であり,炎症局所でMIFが誘導される全てのアレルギー疾患に対して網羅的な治療体系が確立されることが期待できる新しい治療法である。
REVIEW
原著
  • ―6年間の新入生のMMPIの動向―
    松井 三枝, 田中 邦子, 加藤 奏, 倉知 正佳
    2007 年 17 巻 1 号 p. 9-12
    発行日: 2007年
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル フリー
     当大学では精神的健康診断という目的で,1998年より新入生全員にミネソタ多面人格目録(Minnesota Multiphasic Personality Inventory:MMPI)を実施してきた。本研究では新入生のMMPIプロフィールの全般的な傾向を明らかにすることを目的とした。対象は1998年から2003年の富山医科薬科大学新入生1619名である。入学後のオリエンテーション時に集団でMMPIを施行した。MMPIの基礎尺度においてT得点が70を越えた延べ頻度とその割合を調べたところ,最も低い1.9%(軽躁性尺度)から最も高い8.4%(抑うつ性尺度)まであり,どの尺度においても高点者が認められた。1600名の学生のうち3%が統合失調症圏患者でよくみられるMMPIのコードタイプを示した。MMPIの受検は,学生の自己内省を促し,また,フィードバックが早期発見・早期対応や,各種相談機関の利用への橋渡しとなる可能性があると思われる。
  • 山下 昭雄, 古田 豪記, 上田 哲之, 湖東 慶樹, 三崎 拓郎
    2007 年 17 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2007年
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル フリー
     迷走神経の過剰興奮に起因する除脈の発症予防を目的として,心表面高周波アブレーション法を用いて迷走神経洞結節枝及び房室結節枝の選択的遮断を試みた。右肺静脈―左心房流入部の脂肪組織(以下PVFP)および下大静脈右心房流入部―左心房間の脂肪組織(以下IVC-ILA)の焼灼により頚部迷走神経刺激による洞性除脈および房室ブロックは誘発されなくなった。またIVC-ILAの焼灼により右心房前壁における迷走神経刺激による有効不応期の短縮度が低下した。慢性実験においては8週後まで遮断効果は持続した。以上より,本方法は徐脈性不整脈に対する新しい外科治療になりうる可能性が示唆された。
  • ―介護実習を介した医療人としての意識の変化を視点に―
    立瀬 剛志, 鏡森 定信, 関根 道和
    2007 年 17 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2007年
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル フリー
    目的:本学では昭和62年より医学科生に対し介護体験実習を行い,高い教育効果を得ているが,実際に実習体験の前後でどのような学習効果が得られるかが課題である。そこで,実習前後で評価を行い,実習における学生の意識変化の評価を行うことを目的とした。
    方法:対象は医学科の1年生計90人。平成18年度の全学共通のカリキュラムである『医療学入門』において,介護体験実習を評価した。体験実習の前後で11項目からなる質問表により,実習前と実習後をそれぞれ4段階で評価した。前後の評価は,ウィルコクソンの符号順位検定を用い,5%未満を有意水準とした。
    結果:実習内容全体に関しては,ほとんどの項目で実習後得点が有意に上昇した。特に実習前に意識の低い学生に対して大きな効果があった。また実習以前に介護施設の訪問経験のある群に関しては,基本的な生活介助項目の重要性が,経験のない群に関しては介護施設特有の介助や医師像を考える機会として効果が高かった。更に本調査を通して介護特有なコミュニケーションの重要性等が示唆された。
    結論:介護体験実習が,介護に特有なケアの重要性を考える機会であるとともに,基本的な生活介助や将来の医師像を考える重要な体験であることが示された。
CASE REPORT
症例報告
  • 北川 清隆, 柳沢 秀一郎, 山田 哲也, 三原 美晴
    2007 年 17 巻 1 号 p. 27-29
    発行日: 2007年
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル フリー
     両眼瞼下垂を訴えた59歳,女性に対し,alpha adrenergic agonistである5%フェニレフリン及び1%アプラクロニジンの点眼試験を行ったところ,眼瞼下垂は改善した。alpha adrenergic agonistである0.1%ジピベフリンの点眼で加療したところ両眼瞼下垂は改善した。眼瞼下垂を来たす症例において,alpha adrenergic agonistである0.1%ジピベフリンの点眼が有効な場合があると思われた。
  • 旭 雄士, 浜田 秀雄, 平 孝臣, 若杉 雅浩, 丹下 大祐, 岡澤 成祐, 徳井 宏太郎, 筒井 美緒, 林 央周, 遠藤 俊郎, 奥寺 ...
    2007 年 17 巻 1 号 p. 30-32
    発行日: 2007年
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル フリー
     横隔膜神経刺激療法を行い,良好な刺激による換気が得られた1例を報告する。症例は62歳,女性。交通事故により環軸椎亜脱臼,高位頚髄損傷,下位脳幹損傷をきたし入院となった。意識障害,呼吸不全,完全四肢麻痺を認め,気管切開,人工呼吸器にて管理した。意識はほぼ清明の状態にまで改善したが,呼吸不全・完全四肢麻痺は改善しなかった。このため日中の人工呼吸からの離脱を目的に,受傷より86日目に横隔神経刺激療法を行った。術1ヵ月後には最長11時間の人工呼吸器からの離脱が可能となり,レントゲン撮影,入浴,屋外への移動などの際に人工呼吸器なしで移動を行うことが可能となった。高位頚髄損傷による呼吸筋麻痺では人工呼吸器を永続的に使用し,医療・看護・介護に大きな負担になることがある。このような症例では,介護者,医療者の負担軽減,患者の活動範囲拡大のために横隔神経刺激療法は有用と思われた。
  • 筒井 美緒, 旭 雄士, 若杉 雅浩, 丹下 大祐, 岡澤 成祐, 奥寺 敬
    2007 年 17 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 2007年
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル フリー
     Valacyclovir(VACV)は帯状疱疹に対する有効な薬剤であるが,稀に副作用として精神神経症状を来たすことがある。今回VACVによるACV脳症を2例経験したので,若干の文献的考察を加えここに報告する。症例1,78歳,女性。帯状疱疹に対しVACV3000mg/day処方された。服薬開始6日目に意識障害にて来院し,VACVによる急性腎不全,ACV脳症を疑い入院となった。服薬中止にて徐々に症状改善,腎機能も正常化した。症例2,73歳,男性。慢性腎不全にて週3回血液透析を受けていたが帯状疱疹に対しVACV3000mg/day処方された。服薬開始2日目に精神症状が出現し来院,VACVによるACV脳症を疑い入院となった。服薬中止,血液透析にて徐々に症状消失した。ACV脳症の症状は多彩であり,早期の服薬中止により後遺症なく治癒する。早期診断の為にはVACVの副作用として精神神経症状を来たす可能性もあることを留意しておくことが重要である。
学会報告
学会抄録
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