山口医学
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59 巻, 2 号
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原著
  • 安藤 寿彦, 田中 真由美, 田中 芳紀, 三谷 紀之, 山下 浩司, 中邑 幸伸, 縄田 涼平, 高橋 徹, 有好 浩一, 湯尻 俊昭, ...
    原稿種別: 原著
    2010 年 59 巻 2 号 p. 63-70
    発行日: 2010/04/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    血液悪性腫瘍に対し,ドナー血球の生着と抗腫瘍効果を期待し,従来骨髄破壊的・免疫破壊的な強力な移植前処置が行われてきた.この強力な前処置は毒性も強いため,若年者で全身状態の良好な患者にしか施行できなかった.しかし,これまでの臨床研究で,前処置の強度を軽減してもドナー血球が良好に生着することが確認されてきた.当科でも当初倫理委員会の承認を得て,2002年10月からReduced intensity conditioning stem cell transplantation (RIST)を開始している.今回我々は,2002年10月から2007年12月までに,初回同種移植としてRISTを施行した20症例について後方視的解析を行った.平均年齢は50.2歳で,疾患は悪性リンパ腫が8症例と最も多かったが,多岐に及んでいた.3年間の全生存,無進行生存,再発率,移植関連死亡はそれぞれ,57.8%,46.7%,31%,30%であった.移植血球生着については,好中球生着率100%で,生着中央日は13日であった.血小板生着については,移植後50日までで生着率94.3%で生着群での生着中央日は23日であった.移植片対宿主病(GVHD)については,急性GVHDは,grade II-IV 44.4%の発症率で,慢性GVHD発症率は移植後2年までで82.1%であった.また,移植関連毒性について多変量解析を行い検討したところ,高齢や臓器障害の有無は有意でなく,RIST施行の目的は果たされていると考えられた.これまでのRIST施行症例の移植結果をまとめるとともに,今後の方針について考察し報告する.
症例報告
  • 久保 秀文, 来嶋 大樹, 多田 耕輔, 宮原 誠, 長谷川 博康
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 59 巻 2 号 p. 71-77
    発行日: 2010/04/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は59歳の男性で,6年前にIIc型の早期胃癌に対しD2を伴う胃切除術を施行した.組織型は印環細胞癌を含む低分化腺癌でpT1(m),H0,P0,M0,StageIA,ly0,v0,n0であった.術後補助化学療法は施行せず.今回,腹痛,腹部膨満感を主訴に当院を受診した.注腸造影検査で横行結腸に狭窄像を呈し,下部消化管内視鏡検査で全周性の高度狭窄を認め,粘膜は発赤,浮腫調であった.組織生検では悪性細胞は認めなかった.横行結腸部分切除を施行したが明らかな腹膜播種は認めなかった.組織学的には著明な線維の増生を伴う低分化腺癌を粘膜下層から漿膜下層にかけて認めたが,粘膜表面への癌の露出は認めなかった.術前には大腸癌の診断はできなかったが,原発巣と考えられる胃癌標本を再検討し両者の組織型,免疫組織学的染色の結果は酷似したものであったが,初発胃癌はly0,v0,n0であり,大腸原発のlinitis plastica型結腸癌も否定できないものであった.
  • 竹本 洋介, 谷岡 ゆかり, 柳井 秀雄, 祐徳 浩紀, 坂口 栄樹, 山下 勝弘
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 59 巻 2 号 p. 79-84
    発行日: 2010/04/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    経皮的内視鏡的胃瘻(percutaneous endoscopic gastrostomy,PEG)造設術は経口摂取の困難な患者に対し広く普及しつつある.しかし,その一方で,PEGに関連した偶発症に対する認識は,十分とは言えない.今回筆者らは,PEG造設後1週間以上経過して脳室-腹腔シャント(ventriculoperitoneal shunt,V-Pシャント)の感染を生じた1例を経験した.症例は,70歳代男性.正常圧水頭症に対するV-Pシャント術施行の約半年後に,PEG造設のため紹介となった.術前,体表よりV-Pシャントチューブは確認することができず,腹部単純X線写真でも腹部でのチューブの確認は困難であった.胃体中部前壁にPull法,20Frチューブを用いてPEGを造設し,その後,PEGよりの栄養剤の投与は問題なく行われていた.しかし,造設後第9日より発熱・嘔吐が出現した.造設後第31日のGaシンチグラフィー・腹部骨盤部CT検査にて,シャントチューブにPEGチューブが近接し,周囲に腹腔内膿瘍を形成していることが確認された.第39日,X線透視下でシャントチューブを抜去し,症状は改善した.PEGに関連して,当院では21.0%(2005年から2007年までの3年間の105例中22例),諸家の報告でも約10-20%の合併症が経験されている.本例の経験より,PEG造設に際しては,合併症のリスクを考慮して慎重に適応を選ぶとともに,単純CT検査等による術前の腹腔内異物の検索を含めた適正な術中・術後の管理を行う必要が指摘された.
  • 久保 秀文, 来嶋 大樹, 多田 耕輔, 宮原 誠, 長谷川 博康
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 59 巻 2 号 p. 85-91
    発行日: 2010/04/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は72歳の男性で腹痛を主訴として精査目的で当院紹介となった.上部消化管透視検査および胃内視鏡検査で胃体上部から体下部にかけて径9cmの2型病変を認め,生検でT細胞性リンパ腫と診断された.腹部CTでは腫瘍部近傍のリンパ節腫大が疑われ,Ann Arbor分類ではstage II Eと診断し胃全摘術+D2郭清を施行した.開腹時に回腸末端より40-60cmの回腸内にも離れた2個の多発腫瘤病変を認め,合併切除した.病理組織学的検査で全てT細胞性リンパ腫と診断され,No4dのリンパ節と小腸リンパ節の一部に転移を認めた.Human T-Lymphotropic Virus Type1は陽性であった.術後経過は良好であり術後第12日目に補助化学療法目的で血液内科へ転科となった.術後7ヵ月目の化学療法施行後,放射線追加照射中に小腸穿孔を来し緊急手術施行した.DICを併発し術後9日目に永眠された.文献的な考察を加えて報告する.
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