【目的】全身蛋白質代謝回転の測定に、放射性標識アミノ酸を静脈内に定速注入する方法が知られている。今回、我々はアミノ酸輸液投与が麻酔による低体温と蛋白質代謝に及ぼす影響を評価するため、麻酔剤と同時にL-[1-
14C]ロイシンで標識したアミノ酸輸液(アミパレン)あるいは生理食塩液を持続投与して比較検討した。
【方法】ラット頸静脈にカニューラを留置し、静脈麻酔剤のプロポフォールと、L-[1-
14C]ロイシン標識アミパレンあるいは生理食塩液を4時間持続投与した。対照としてプロポフォールと等量の脂肪を配合した静注用脂肪乳剤投与群を配した。血漿中遊離ロイシン比放射能および呼気中放射能排泄速度を測定し、蛋白質代謝パラメータである酸化(E)、合成(S)および分解(B)を蛋白質代謝回転モデルから算出した。また、ラットの体温はテレメトリーにより測定した。
【結果および考察】生理食塩液群では無麻酔時および麻酔時ともにEに比してSの方が高値であった。一方、アミパレン群において、無麻酔時にはE(1096.9μmol/kg/h)がS(756.6μmol/kg/h)より高く、麻酔時にはS(968.8μmol/kg/h)がE(767.0μmol/kg/h)より高かった。また、Bはいずれの群も同程度であった。
体温に関して、無麻酔下の生理食塩液群ではやや低下し、アミパレン群は投与開始から投与終了までほぼ一定の値で推移した。一方、麻酔下ではいずれの群も著しい体温低下がみられたが、アミパレン群では生理食塩液群に比して有意にその低下は抑制されていた。
以上のように麻酔による低体温下時にはアミパレン群を投与することでアミノ酸の酸化が抑制され、逆に蛋白質合成が促進されていた。このことから、麻酔時のアミパレン投与で認められた体温低下の抑制に、アミノ酸から蛋白質合成の促進が寄与していることが推察された。
抄録全体を表示