日本薬物動態学会年会講演要旨集
第18回日本薬物動態学会年会
セッションID: 8PE-10
会議情報
幼若ラットへの糖過剰投与によるチトクロムP450 mRNA発現低下に対する脂肪配合の効果
*山口 真理西村  益浩土居 和久上田 信彦内藤 真策
著者情報
キーワード: c-48, m-16, r-4
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】臨床ではTPN(中心静脈栄養)実施時にブドウ糖を主とする栄養液を過剰に投与すると、脂肪肝等の肝障害が発生する。さらに新生児・未熟児へのTPNでは、胆汁うっ滞を伴う肝障害を惹起することが知られ、また肝薬物代謝酵素への影響が考えられる。そこで幼若ラットを用い、TPN組成と肝薬物代謝酵素との関係について、ブドウ糖のみを配合した栄養液に対し脂肪配合の効果を検討した。【方法】3週齢(体重60_から_70g)のSD系雄性ラットにブドウ糖のみをカロリー源とした脂肪0%液および投与カロリーの20%に相当する脂肪を配合した脂肪20%液を頸静脈より4日間 TPN投与し、肝臓の採取と採血を行った。対照として摂食群を配した。投与速度は3mL/kg/hrで開始し、半日毎に40mL/kg/hrまで漸増させ、過剰量のエネルギーを投与した。肝試料からはtotal RNAを抽出し、チトクロムP450(Cyp1a2、Cyp2a2、Cyp2b2、Cyp2c11、Cyp2d1、Cyp2d2、Cyp2e1、Cyp3a1、Cyp3a2およびCyp4a1)のmRNAをOne-Step RT-PCRにてリアルタイムに蛍光を検出する方法で測定した。また血液生化学検査および肝病理組織学的検査を行った。【結果・考察】摂食群のmRNA発現量を1として相対比較すると,全ての分子種において脂肪0%群での発現量は0.008_から_0.306にまで低下し、特にCyp1a2、 Cyp2b2で大きく低下した。それに対し、脂肪20%群の発現量は0.316_から_0.840の範囲にあり、脂肪0%群と比較して明らかに発現量が維持された。また血液生化学検査および肝病理組織学的検査において、脂肪0%群で認められた肝障害が脂肪20%群で改善されていた。以上より、幼若ラットにおける糖負荷によるエネルギー過剰投与時の肝薬物代謝酵素の発現低下は脂肪の配合により抑制されることが明らかとなった。

著者関連情報
© 2003 日本薬物動態学会
前の記事 次の記事
feedback
Top