日本薬物動態学会年会講演要旨集
第18回日本薬物動態学会年会
セッションID: 8PE-09
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脂肪配合によるヒト肝細胞培養時のチトクロムP450 mRNA発現維持効果
*西村  益浩山口 真理上田 信彦内藤 真策
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キーワード: c-48, h-8, m-16
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抄録

【目的】ヒト肝細胞の培養において,P450 mRNAの発現量や薬物代謝酵素活性の経時的な低下を生じることが報告され,我々もP450 mRNAの発現低下を確認している。今回,培地成分に脂肪を添加することによるP450の発現量の維持効果を検討した。
【方法】凍結ヒト肝細胞(In Vitro Technologies, Inc.)をhEGFと抗生物質を含む専用培地(BioWhittaker, Inc)に懸濁し,5×104 viable cells/cm2で蒔き,3時間の培養後に非接着細胞を除去し,ダイズ油と卵黄レシチンよりなる脂肪乳剤(輸液製剤:イントラリポス)を添加した培地に交換した。なお,培地中の脂肪濃度は0,0.5,1,2,3及び4%とした。培養開始24時間後(培地交換の21時間後)に,肝細胞からtotal RNAを抽出した。また,培地に卵黄レシチンのみを添加した群を配した。mRNAはOne-Step RT-PCRにてリアルタイムに蛍光を検出する方法で測定した。
【結果・考察】培地交換前(培養3時間値)のmRNA発現量を1として相対比較すると,対照群(脂肪濃度0%で21時間培養)ではCYP1A1,CYP1A2及びCYP1B1のmRNA発現量はそれぞれ0.18,0.088及び0.40に低下したのに対し,脂肪添加群では濃度に依存して発現量が対照群と比較して高値をとり,脂肪濃度4%群ではそれぞれ0.64,0.39及び0.99であった。また,CYP3A4及びCYP2E1のmRNA発現量も脂肪添加により弱いながらも同様の傾向を示した。更に,アルブミン及びトランスフェリンのmRNAについても,対照群では発現量が低下したのに対し,脂肪添加群の発現量は濃度に依存して対照群よりも高値をとった。なお,卵黄レシチンのみの添加によるP450などのmRNA発現量は対照群と差異を認めなかった。以上より,ヒト肝細胞の単層培養において,培地に添加した脂肪は薬物代謝酵素及びアルブミンなどのmRNA発現量の減少を抑制する効果を示すことが明らかとなった。現在,脂肪成分との関連について検討を行っている。

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© 2003 日本薬物動態学会
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