結腸癌手術の後には, 一過性の機能障害を除けばほとんど術後機能障害は起こらないと考えられてきた. ところが, 最近S状結腸癌では, 下腸間膜動脈根から上直腸動脈領域のリンパ節郭清が必要なことが明らかにされ, この領域の郭清がroutine手術として行われることになった.この広汎リンパ節郭清では, 大動脈前面を下行する下腹神経の損傷を来すことが推測される.そこで, 教室におけるS状結腸癌術後の排尿および性機能について検討した.
R
3の手術では性機能障害, とくに射精障害が46%に認められたが, R
2以下の手術では性機能障害は10%にすぎなかった. また, 排尿障害はS状結腸癌全体で21.6%に認められたが, これらはすべて軽度なもので, R
3,
2手術でも高度の障害はなかった.
以上より, S状結腸癌に対しR
3あるいはR
2の郭清を行う場合には, 神経温存の配慮が必要であることが判明した.併せて, 術中神経温存の方策についても述べた.
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