このところ,環境問題に関する社会の危機感が高まり,環境コストを市場の内部に取り組むべくコンセンサスが形成されつつある。川崎公害訴訟では,国・首都高速道路公団が沿道環境対策を確約して和解に至った。運輸政策審議会は,自動車の燃費に応じて税額に差を設ける税制の「グリーン化」実施を求める答申を行った。運輸省は,低公害車の認定制度を創設し運輸業者に導入率の数値目標を課し,導入実績を公表し取り組みが遅い事業者には指導・勧告を検討するという。企業にも米国等に追随して省エネルギーや廃棄物処理など環境保全対策に投じた費用と対策の実施による省資源などの節減効果を金額で明示する「環境会計」を公表する動きが出てきた。価値観が経済合理性から環境の重視に変り,企業が環境への負荷を外部コストとして放置することを市場が許さなくなる方向がみえてきつつある。モーダルシフトのキャッチフレーズが唱えられるようになったのは,運輸省が平成2年の運輸政策審議会の答申を受けて平成3年4月にモーダルシフト推進を表明して以来である。モーダルシフトという表現は特定の輸送モードを刺激するというのでモーダルミックス,マルチモーダルなどの造語もあるが,いずれにしてもモータリゼーションの進展,高速道路の整備,生産システムにおけるジャスト・イン・タイムの要請等から物流のトラック輸送への依存度が高くなりすぎたために,環境問題,道路の渋滞,エネルギー効率,運転手不足などの点で深刻化してきた弊害を解決するために,幹線輸送をトラック偏重から鉄道,海運にシフトすることが喫緊の課題となっている。政府は長
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雑貨輸送における鉄道と海運の比率を現在の40%から2010年に50%を超える水準に向上させることを目標にかかげている。このモーダルシフトの受け皿の中で,鉄道には種々の制約があり大きな期待は持てないところから,フェリー, RORO船,コンテナ船など海運がその担い手として期待されている。特にトラック輸送からのシフトとなると,トラックやトレーラーが車両ごと船内に乗り込むフェリーおよびRORO船が注目されるのは当然であり,その中でもヘッドレス・シャーシの無人航送は,運転手の省力効果,ヘッドの回転効率の向上,および航送スペースの節減というメリットがあり,トラック業界におけるトレーラー化の促進と相侯って最も期待される輸送形態である。ここでは,この長
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フェリーによるシャーシ輸送が物流の中でどの程度の地位を占めているのかをある程度の誤差を覚悟で推計してみて,さらに今後果たして期待どおり伸びる余地があるのかを考えてみたい。
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