本論文では, わが国におけるファッションイラストレーションの変遷について考察し, 以下のことを明らかにした。(1)今まで別々に論じられていた「抒情画」と「(狭義の)ファッションイラストレーション」の二つの流れを「(広義の)ファッションイラストレーション」の中に系統づけまとめた。(2)広義のファッションイラストレーションにおいて, 上記の二つの流れの他に, 被服製作に原点を見い出すことのできる菅沼金六から須貝一男・青木伊津子らへと連なる「基準線方式」による「スタイル画またはファッションデザイン画」の流れが存在することを位置づけ, 検証して重要性を指摘した。(3)上記の(1)と(2)の相互の関連を明らかにした。また全体の流れを三つに整理することを提案し, 相互関係について系統図を作成し, 提示した。その結果, 三つの流れはそれぞれに重要であり, 互いに関連を持ちながらわが国における「(広義の)ファッションイラストレーション」の世界を発展させることに寄与していることを明らかにした。
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