現代の幼年文学は、その出発当初から「食べ物」や「食べること」を積極的に描いてきた。〈食〉は、その時代の空気や価値観を色濃く反映し、愛情や人間関係、しつけや教育、文化など、さまざまな問題を内包し、幼年文学の本質的な部分とも深く関わっている。2016年から17年にかけて刊行された「たべもののおはなし」シリーズにおいては、従来の作品とは食べ物の描かれ方が変化してきている。擬人化された食べ物が多く登場し、食べ物だけの世界も展開している。こうした食べ物の描かれ方の変化は、いったい何を意味しているのだろうか。このシリーズにおける食べ物の描かれ方や人と食べ物との関係、作品世界における食べ物の役割等について検討した。
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