過去15年間に異物摘出の行なわれた35症例(観血的除去27,非観血的除去8)に検討を加えた,異物の種類及び頻度は,魚骨5,義歯5,針4,弾丸3,碁石2,ピーナッツ2,釘,鉛筆,歯ブラシ,カミソリ,ヘアピン,すじ肉,つまようじ,茶柱,おもちゃの弾丸各1,及び医原性のカテーテル3,鋼線,ガーゼ各1であった.部位別では気道6(2例は非観血的に摘出された.以下同じ),食道8 (4),胃5,縦隔4,血管3 (2),腸管6,心1,脾1,胸郭1であった.異物摘出に際し,注意すべき点は以下の如く考えられた.非観血的摘出を試みる場合;異物にはX線透過部分が付随していることを念頭に入れ,原則として全身麻酔を行なって気道確保,安静,筋弛緩を得て行うことが肝要である.しかしそれが困難な場合には,いたずらに時間を費して患者を疲弊させることなく,観血的除去を考慮することが大切である,とくに食道異物の非麻酔下,非観血的摘出には食道穿孔の危険が常に潜んでいる事を銘記すべきである.観血的摘出を試みる場合;全身麻酔下の体位の変換,筋弛緩などにより異物の位置が変る可能性があるので,手術直前に異物の位置を再確認することが重要である.陳旧例では異物進入の自覚がない場合が多く,他疾患と誤まられて治療を受けていることが多いので入念な病歴の聴取が必要である.
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