情報技術の急速な進展により, 現在, 多くの企業が設計業務に三次元CADを用いている. これは主に, 開発期間の短縮, 製品品質の向上, 試作回数の減少などを目的としている. しかし, 三次元CADを導入するだけでは, これらの成果をあげることはできない例えば三次元CADの利用の多くは従来の二次元CADの使用方法と基本的には同じで, 設計者の検討した結果に基づいて製品の形状モデリングを行っているだけに過ぎず, 従来の設計作業とほとんと変わっていない部分もある. また, 開発技術が個人の情報となってしまっており, 設計者の問のあるいは全社的情報の衆知を結集することまでには到っていないようである.
一新時代の設計課題は, 高い品質を短期に達成する設計の短期化にある. 設計の三次元化で生成される三次元データの活用を広げるための新たな考え方, システムの進歩, プロセスの新構築などが設計改革のキーポイントになる
1) .設計は, 最終的には何らかの人工物の創造を目的とする .本研究は, 従来の形状モデリングだけを行う設計ではなく, 三次元CADを有効に利用した三次元設計のプロセスの提案および検討を行い, 情報の共有化 (例えば設計のコラボレーション) を図るためにその設計作業をドキュメント化し明確にすることを目的とする. 課題としては, 江戸時代後期の「からくり」のひとつである茶運び人形の具現化とした. 現存する資料を基にして, 設計段階では三次元CADを用い, 視覚情報と製作1青報の諸問題を考察するとともに試作機の性能などについて述べる.
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