フェーンによる水稲の被害は, 稲体からの過蒸散がその直接的な原因であるが, 稲体のどの部位からの蒸散であるか明らかでない。本研究はこの点を明らかにする目的で, Pressure chamber を用い穂からの出水個所と出水量について検討した。供試した水稲は, 1/5000アールポットに栽培した農林20号で, 出穂始めから出穂期後10日前後にかけて, 穂首の下約5cmで切り出し, ただちに下から加圧した。
出水個所は, 穂首, 小枝梗, 芒など, 穂の各所から出水が認められ, 特に穂首, 小枝梗は出水しやすく, 出水の始まる時の圧力は昼間で6バール程度であった。一方, フェーン遭遇時には葉身の水孔からの蒸散が多いが, 昼間にこの水孔から出水させるに必要な圧力は6バール前後であるところから, フェーンに遭遇した水稲の穂からの蒸散は, これらの部位であることが推測される。また, これらの部位からの出水量は, 穂の抽出程度や昼夜によって異なり, 昼間の出水量が多いのに比較して, 夜間には出水しにくいことがわかった。
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