乳臼歯の既製金属冠の審美性に劣るという欠点を解決するために,チタン既製金属冠表面をナイロン11でコーティングすることにより歯冠色に近い乳歯用金属冠を試作した.
本研究では,審美性を考慮した乳歯用既製金属冠を臨床応用すべく,引張剪断,摩擦摩耗,表面粗さ,吸水,着色および曲げ試験を行い,臨床応用が可能であるか否かについて検討を行い以下の結論を得た.
1.引張剪断強さはほぼ17MPaを示し,サーマルサイクル5000回後でもほぼ10MPaを示し,臨床応用に十分な強さであった.また,曲げ試験において剥離などは認められず,チタンとナイロンの接着に関してブラスト表面処理の有用性が示唆された.
2.着色は即時重合レジンとほぼ同程度で,さらにブラッシングで軽減することが判明し,臨床使用時にも審美性を継続できることが示唆された.
3.冠縁の切除,膨隆付与,研磨などの操作性は従来の乳歯用既製金属冠と全く同様であり,白色を呈した審美的な乳歯用金属冠を開発することができた.
4.現在市販されている乳歯用既製金属冠の利点を損なわず,さらに審美性に優れた,ナイロンコーティングを施した乳臼歯用既製金属冠の開発と臨床応用に対する有用性が明確となった.
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