1989年1月より12月までに職域における健康診断で施行した安静時12誘導心電図 (ECG) 12528件 (対象30-59歳) を解析した。
心電図における各伝導時間, 前額面電気軸と心拍数について性, 年齢別に検討した。PQ時間と男性におけるQTcは加齢により延長した。また前額面QRS軸も加齢により左軸偏位化した。心拍数は加齢の影響が見られなかった。ところで, PQ時間, QRS時間およびQTcは各年齢層で性差がみられた。
心電図有所見の発現頻度について, 調律, 伝導障害は1度房室ブロック, 洞性徐脈, 不完全右脚ブロックの順で, WPW症候群の発生頻度は0.18%であった。また, 電位および位置情報は左室肥大 (LVH)所見が37%を占めた。現在のLVH判定基準は一部改定する必要がある。
最終的に専門医に異常を指摘された所見は697件 (5.6%) であった。この中で心室性期外収縮 (VPC) と左室高電位 (LVH) およびST-T異常を示し2次精密検査で治療または経過観察となった者について検討した。前者のVPC例はホルターECG検査を施行し5例が治療適応となり, また, 後者 (0.06%に巨大陰性T波所見) にはトレッドミル, 心臓エコー検査を施行し, 30例に肥大型心筋症の疑いがあった。これらの結果は, 今後健診におけるECG読影に有用な情報を提供できるものと考える。
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