2012 年(平成 24 年)の暮れ,スーツケース一つでタイのアユタヤ地域総合大学 ARU をはじめて訪問した。それまで遺跡観光のためにバンコクから日帰りで来たことはあったが,大学のキャンパスははじめてのことだった。短い滞在を2回の後,翌年 11 月には大学側が科学技術学部に研究室を提供してくれることになった。それ以降,現時点 2017 年3月末までの間に日本の秋から冬の時期に,計 10 回で延べ 400 日を越える滞在となった。この間,ARU の要請で大学の若手教員,地域の小中学校教師,児童・生徒たち向けのセミナーやワークショップを何度も計画し実施してきた。本稿では,この間の取り組みから,ワークショップで提供できるようになった電磁誘導の実験・観察に至る電気の材料,器材の事例を報告する。具体的には「乾電池と豆電球」の実験から始まり,現代社会を支える電気エネルギー源の発電機と モータの基本原理である電磁誘導現象までの一連の実験・観察活動の構成を考察する。その一連の題 材シリーズのうち,本稿では現地ワークショップで使う電源として扱う「乾電池」「バイク・バッテリー」「太陽電池パネル」,また手近な負荷として使う「豆電球」,ポピュラーになってきた「LED 豆電球」, そして電磁誘導の実験観察に欠かせない「磁石の磁界パタンの保存」など,基本素材の扱い方と工夫 を報告する。あわせて海外で科学実験ワークショップを計画し実施するうえで配慮すべき事柄を検討する。
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