カルゴ・システムはメソアメリカの人々(主にインディオ)の行動を規定し, その社会構造を決定するものとして多大な関心が払われてきた。しかし, 一方でカルゴ・システムが機能しているメカニズムは威信経済論によって役職の階層構造の下に隠蔽され, 閉鎖的で統合力のある社会において最も機能するものと見なされてきた。少なくとも社会の近代化によってカルゴ・システムは衰退する傾向にあるとされる。ところが, 80年代の研究は階層構造が必ずしも普遍的な現象ではないことを示している。今, カルゴ・システム研究には階層を持たないカルゴ・システムからの視点が求められていると言っても過言ではない。本稿はその一つの試みである。本稿はカルゴが祭礼を企てようとする人々の間に循環する記号であることを示し, その記号論の立場からメソアメリカの社会がどのように構築されているかを考察する。その過程で役職の階層化は特殊な現象であることが示される。
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