線維筋痛症に対して長期ステロイド内服中の70歳女性。来院7日前より下痢, 嘔吐が出現し近医受診したが, 体動困難であったため当院に救急搬送された。来院時, 頻脈, 発熱を認めた。培養検査採取の上, 抗菌薬投与と十分な補液を行い, CT所見から誤嚥性肺炎と急性腸炎の診断で入院加療となった。入院1時間後, 意識レベル低下, 血圧低下に至り, 昇圧薬を含めた蘇生を行ったが反応せず死亡となった。翌日, 来院時採取された血液培養, 便培養からAeromonas hydrophilaが検出され, 腸炎から発症した敗血症の診断に至った。Aeromonas hydrophilaは夏季に多い腸炎の起因菌となるグラム通性陰性桿菌である。多くは自然軽快する腸炎として経過するが, 肝硬変, 担癌患者, 免疫不全者では時に壊死性筋膜炎のような軟部組織感染症, 特発性細菌性腹膜炎など重症感染症を来すことが知られている。Aeromonas hydrophilaによる急激な経過を来す症例も文献で報告されており, 本症例では腸炎からbacterial translocationを来したものと考えられた。
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