粘膜調整材の汚れの程度によって色調が変化する性質を有する粘膜調整材が市販され, この色調変化によって交換時期が判断できると言われている。そこで今回我々は, この粘膜調整材について若干の基礎的検討を行った。
実験には, 抗炎症作用を有するアズレンおよびエリスロシンのアルミニウムレーキを含有する市販の変色性粘膜調整材 (三金工業社製FitSofter) を用いた。また, 対照としてアズレンを含有していない試作品を用いた。
実験は流動性について検討するとともに水中, 義歯洗浄剤およびpHを変化させた人工唾液への浸漬に伴う変色, 表面粗さ, 接触角ならびに重量変化について検討を行った。また, 抗菌性および細菌付着性についても検討を行った。その結果, 以下の結論を得た。
1. 流動性はアズレンを含有したものでは室温でやや早く低下したが, 37℃ では両者ともほぼ類似した流動性を示した。
2. 蒸留水, 各種pHの人工唾液浸漬および義歯洗浄剤浸漬による変色に差はなく, 5日までに大きく変色した。
3. 重量, 表面粗さおよび接触角はアズレン含有の有無にかかわらず酸化型義歯洗浄剤浸漬により大きな変化を示した。
4. アズレンの含有は粘膜調整材の細菌付着性に影響しなかった。
5. 変色性粘膜調整材はC.albicansに対して練和直後および1日後のみ抗菌性を示したが, アズレンを含有しないものに抗菌性は認められなかった。
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