肺炎球菌性呼吸器感染症の迅速診断における尿中抗原検査と喀痰
グラム染色
検査の有用性について比較検討した.呼吸器感染症を疑い肺炎球菌尿中抗原検査 (Now Streptococcus pneumoniae) と同時に喀痰塗抹・培養検査を行った289症例, 313感染エピソードを対象とした.肺炎球菌陽性の所見は尿中抗原・喀痰塗抹・培養でそれぞれ43回, 45回, 46回, のべ67例・73回に認められ, 54例・57回で肺炎球菌性呼吸器感染症の診断基準を満足した.肺炎球菌性呼吸器感染症診断における陽性率は, 尿中抗原649% (37/57), 喀痰
グラム染色
63.1% (36/57) と同等で, 偽陽性率も共に3%程度と低率であった.感染重症度別陽性率を比較すると, 尿中抗原は, 軽症5/10, 中等症26/41, 重症6/6と重症例ほど陽性率が高かったのに対し, 喀痰
グラム染色
陽性は, 軽症8/10, 中等症27/41, 重症1/6と, 重症例では良質な喀痰が得られないことが多く低い陽性率であった.また抗菌薬前投与のある9例中尿中抗原は8例, 喀痰
グラム染色
は4例で陽性であった.肺炎球菌性呼吸器感染症の迅速診断として, 尿中抗原検査は感染症重症度が軽症の場合は喀痰塗抹に比べ陽性率は劣るものの, 中等症以上, 特に重症例での有用性に優れ, 良質な喀痰が得られない症例や, 抗菌薬の前投与のある症例でも高い陽性率を保っていた.
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