2000 年 7 巻 2 号 p. 121-124
集中治療室内で行った塗抹検査で,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)呼吸器感染を疑い,治療しえた2症例を報告する。症例は67歳(患者1)と65歳(患者2)の男性で,間質性肺炎による低酸素血症のため人工呼吸管理中であった。併発したグラム陰性桿菌による肺炎に対してセフェム系抗生物質を長期間,静脈内投与した。この間,気道分泌物の塗抹検査でグラム陽性ブドウ球菌と白血球の貪食像を多数認めた。アンピシリンまたはホスホマイシンを投与後24~48時間の塗抹検査で,細菌数が減少しなかったため,MRSAによる感染も疑った。患者2では,バンコマイシンを投与した。中央検査部でMRSAを同定できたとき,ベッドサイドの塗抹検査では細菌を認めなかった。ベッドサイドでの塗抹検査が,MRSAによる感染の推定と抗菌薬の効果判定に有用であった。