I 我々は5年前, 発声中の声帯振動の超高速度映画撮影装置を開発し, 以来この装置を用いて得られた研究結果を報告してきた. しかし, この装置も常に満足すべきものではなく, 今回過去の経験から新しい装置の開発を行ない完成したので報告する.
II 新装置開発には, 次の点に留意し設計した.
1 シャッター定数K=5~10 (ボケの少ない画像のため)
2 撮影コマ数10,000まで
3 ASA 200~400フィルム使用 (カラー撮影も可能なこと)
4 絞りf=8~16
5 照度250×10
4Lux以上
更に装置の一般的構成として
1 検者と被検者は普通診察時と同じ様に向い合って撮影操作を行なう
2 装置全体はコンパクトで1つのユニット構造である
3 高速度カメラは400ftのフイルムも使用可能である
4 16mmシネカメラ (通常スビード) も同時使用できる
5 音声, 声門下圧等, 他のパラメーターを同時に記録できる
III 新しい装置は, 光源として2または3KWのクセノンランプを使用した. 照明法においては光束交叉法が応用された. すなわち, 光源 (クセノンランプ) は回転楕円鏡にて集光され, この光束は第I平面鏡 (
コールドミラー
) によって90°曲げられた後, 一旦第II焦点を結び再び拡散し, 第II平面鏡 (
コールドミラー
) にて直角に曲げられ, 非球面コソデンサーによって被写体を照明するに充分な大きさに収束される. この光束は, 口腔内に入り咽頭にて間接喉頭鏡によって声帯に向けられる. 高輝度照明による熱は,
コールドミラー
型の回転楕円鏡, 2枚の
コールドミラー
型平面鏡並びに特殊防熱性ガラス材の集光レンズによって除去される. このため熱線による被写体の損傷が極めて効果的に防止されている. 高速度カメラは, 日立HIMAC 16HDを用い, 前後に200mmの可動性をもたせ, 被写体の大きさによって200mmと150mm望遠レンズをつけかえ, これとベローズの組み合わせにより倍率を適当にかえることができる. このカメラは最高400ftまでのフィルム装置が可能なので, 長短種々の発声における撮影ができる. また, オッシロスコープ上の現象を同時に撮影できるので, その他のパラメーターを同時記録することができる. 撮影には, 検者, カメラマン, それに被検者の位置を調整する人を加え3人が当る. カメラマンはコントロールボックスによって全ての器械の作動を1ヶ所で操作できる. 検者と被検者は, 普通診察を行なうのと同じ様に向い合って座り, 被検者には何等束縛を強いることなく, 短時間内に撮影できるのが一大利点である. 従って, 従来よりも広範囲の対象について撮影可能である.
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