日本のガンは,明治維新まではかなり多かったと思われるが,狩猟の圧力と農工業の発展に伴う生息環境の悪化により,羽数が減少の一途をたどり,1960-1970年頃には10,000羽以下(表5)となった.1971年にガン類はすべて狩猟禁止となった.1980年現在の渡来数は10,000-15,000羽(表2)で,そのうちマガンは約60%,ヒシクイは約35%,コクガンは約5%である.
シジュウカラガン
は1970年以降は伊豆沼で毎年1-3羽,カリガネも1975年以降伊豆沼で毎年数羽見られているが, ハクガン,サカツラガン,ハイイロガンは日本では稀である(表4).
日本のガンの越冬地は9か所で,うち3か所はコクガンの越冬地である(図1).残りの6か所はマガンとヒシクイの越冬地で,太平洋岸にあるのは宮城県伊豆沼(ガンの最大羽数の渡来地)1か所である.他の5か所は日本海岸にあり,羽数は少ない(表2).渡りの中継地は13か所で,うち11か所は北海道にある(図1).渡りのコースは図3,4,5に示した.
毎年9月下旬に渡来し始め,10-11月に最大羽数となり,3月に渡去を開始し,3月下旬から4月に北海道に集結し4月末から5月初めに日本を離れる.
日本のガンの最大羽数カウントは,12月の上•中旬頃,降雪期の前がよい.降雪によりガンが分散するため有効なカウントが困難になるためである.
マガンとヒシクイの採食する植物は,水田の籾(落穂,落籾),畦の雑草,ヒシ(
Trapa)やマコモ (
Zizania),その他の水生植物である.コクガンはアマモ(
Zostera),アオノリ(
Enteromorpha),養殖ノリ(
Porphyra)を食い,陸上採餌はしない.
日本のガンの羽数減少は明治以来進行していたが,第2次世界大戦以後の1950-1970年間に急減したことは注目に価する.これは日本のガンの特徴と言ってよく,根本的な保護対策が望まれる.
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