日本の都市地理学における階層的都市システム研究は,日本国内の都市を対象として進められてきた.1980 年以降盛んとなった世界都市研究は,世界の都市システムに東京を位置づけたが,日本のその他の都市は研究対象とされてこなかった.日本の都市地理学と世界都市論ではそれぞれ,階層的都市システム研究は進展したが,これまで相互の接点は,ほとんど存在しなかった.1990 年代以降,世界都市研究では,海外でこれまで地方都市として認識されていた都市が,世界都市システムの構成要素として認識されるようになった.それに対して,日本の地方都市では,福岡のみが限定的な国際的都市と認められるにとどまった.2000 年頃より,世界的な都市化とグローバル化の進展とともに,国際都市間競争という概念が世界的に広まり,都市の国際競争力は,グローバル都市ランキングによって具体的に示されるようになった.
グローバル都市ランキングによる都市の序列は,世界都市システムにおける都市の階層性を示している.世界都市システムでは,国境を越えて結合する都市の数は増加し,結合の密度は高まり,結合の仕方も多様化している.その結果,直接結合していない都市どうしであっても,競争関係となる.日本の都市において今後求められる機能は,グローバルな都市機能である.その水準は必ずしも高くなくとも,国際的指標を相対的に評価し,「都市の国際競争力」を測定することによって,世界都市システムに置かれている階層の把握は可能である.日本国内の都市システムであっても,国内上場企業の本社数や支店数だけではなく,グローバルな都市機能を評価しなければ解明することはできなくなっている.つまり,国内的都市システム論と世界都市論の接合,あるいは融合が,学術的にも都市政策としても求められるようになっている.
いかなる都市や都市圏であっても,グローバルな指標をもとにして,世界都市システムにおけるポジションの確認はできる.世界都市システムにおける日本の都市の位置づけの把握は,これまで異なるコンテクストで発展してきた都市システム論と世界都市論を接合あるいは融合する契機となるであろう.日本全国での都市のグローバルな位置づけについての研究は,学術的な意義だけにとどまらず,地方自治体が今後,「地方版総合戦略」を立案し,実行していくうえにおいても,有効である.
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