近年は国内でも無人機がかなり一般的に知られるようになってきた.マスコミも「無人航空機」あるいは「無人飛行機」などの代わりに「無人機」という用語を使いつつあるようである.おそらく福島原発での活躍や,北朝鮮の無人機,また最近は「ドローン」と呼ばれることの多いマルチコプターがしばしばニュースとなるようになったことなどの影響であろう.福島原発の例からもわかるように,過酷な環境で人間パイロットに代わって業務を行う無人機は,国内のみならず北極や南極などの極域における科学観測においても大変有用である.日本の南極観測に関しては,2004年頃から国立極地研究所の一部の研究者グループが固定翼無人機を南極昭和基地で利用することを試みたのが始まりである.筆者は偶然このグループに関わる機会を得て,南極の夏期における観測のために,国立極地研究所や福岡大学との無人機の共同開発と,南極の夏期シーズン(12月〜1月)のみではあるが,2010年から2015年まで4回の夏期シーズンにわたって実際に南極で観測・運用を行う機会を得た.本稿では,極域の特に南極における各国および日本の無人機観測の動向と,筆者が関わった観測・運用の実際と課題等について述べる.
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