電子衝撃により生成する過剰運動エネルギーを有するイオン(KEイオン)は主として分子イオンの単純開裂によって生成するので,そのマ
ススペ
クトル(KEマ
ススペ
クトル)は化合物の構造との対応がよい.
ヘキセン異性体(13種)について検討した結果,そのKEイオンは,β開裂(二重結合に対しβ位の結合の切断)及びα
s開裂(sp
2炭素に側鎖が二つついている場合のα位の開裂)によって生成しやすく,開裂の規則性がよいので,構造と対応させてKEマ
ススペ
クトルによってヘキセン異性体を分類することができた.衝撃電圧40Vと70VのKEマ
ススペ
クトルは,ともにフラグメントイオンの構造,安定性,開裂機構などに関する知見を与え,通常のマ
ススペ
クトルも併用すれば,ヘキセンの全異性体の構造推定(ただしシス-トランスの区別は除く)が可能といえる.又,メチルイオンの相対強度と
13C-NMRの化学シフト値の総和との間に直線関係が見いだされ,構造推定のみならず化合物の構造からそのKEマ
ススペ
クトルを予測する可能性があることが分かった.
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