福島第一原発の事故から10年がたった今年、NHKと民放各局が放送した関連のドキュメンタリー番組40本を視聴し、6つに分類して内容分析した。「事故処理」では「廃炉」の期限が見えないこと、「除染」の費用の膨張とその原因が明かされた。また放射線による被ばくの影響など「健康被害」が見えにくくなる中で、「震災関連死」に際して遺族が提出する「死亡経緯書」を拠り所に被災の影響による死を見つめる番組があった。「復興」については避難指示が解除された町の人間模様を多様な目線から見つめる番組が多く、「戻った人」と「戻らない人」の対話も試みられた。「子どもたちの心」を追う中では、これまで言葉にできなかった思いを言葉にする試行がなされた。また制作者が自ら登場して故郷を訪ねたり、自身が10年前被災した頃の思いを伝える番組もあり、事故の「風化」につながる「他人事」化を乗り越えようと、「自分事」としての語りが試みられていた。その一方で避難指示区域外からの「自主避難者」の厳しい状況を伝える番組や、メディアも含めて事故の教訓が生かされているか否かを検証する番組は少なく、テレビ報道のバランスの偏りも感じられた。
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