一往復型内燃機関は炭化水素と酸素を不完全燃焼させ水素一酸化炭素を含む合成ガスの発生装置として使用することができる。
内燃機関を合成ガス製造に実用する際の主な障害はつぎの点にある。少ない酸素で反応を行なわせると多量の遊離炭素が発生し点火栓が汚損される。逆に酸素が多くなると逆火する危険性が大きくなる上にノックや過早着火が起るようになる。しかしながらこの種の困離は圧縮比, 酸素一炭化水素比および内入圧力を適切に選び, 混合気の吸入方式に特別の考慮をはらえば解決のつく問題である。
合成ガス製造を目的とした内燃機関を開発するために8気筒, 総行程容積42.4lの火花点火機関を試作し, メタン94%を含む天然ガスと純度96%の酸素とを用い酸素, メタンの混合化, 吸入圧力, 回転数など運転条件を種々変えて合成ガス製造実験を行なつた。
代表的な試験結果の一例を示すと, メタンの発熱量の77%が有用ガスの発熱量に, 8%が機械仕事となる。従つて装置としての正味効率は85%に達しており, 他の合成ガス製造法と比較しても効率が高い。
性能試験について機関の信頼性, 安定性を確めるため連続1000時間の耐久試験を行なつた。1000時間の耐久試験は無事故で終了することができた。試験終了後直ちに機関を分解し精密な検査を行なつたが, 機関のどこにも破損, その他の異常もなく, 機関の燃焼室はカーボンで汚損されていなかつた。
これらの結果から, 内燃機関で工業的に合成ガスを製造することに対しては機関の設計が適切であれば何ら問題なく, この方法によつて最も経済的に合成ガスが製造できるという確信を得ることができた。
抄録全体を表示