楽譜は音符や休符が集まってフレーズを構成し, そのフレーズが集まって一曲の楽譜になるというように階層構造をなしているが, このような構造は文章の構造と類似している. 本研究では楽譜の視覚的情報処理単位を明らかにし, 文字列の場合と比較することを目的とした. アイカメラを用いた注視点分析により, 要素分解した楽譜と文字列の情報受容単位を計測し, 検討した結果, (1) 1注視点当たりの記号の数は, ランダムな音符列で1個前後, メロディのある楽譜で約3個となるのに対し, ランダム文字列では約2個, 文章では8個以上となる, (2) 1注視点当たりの情報量は, ランダムな音符列で約6.5ビット, 楽譜で約19ビット, ランダム文字列で約11ビット, 文章で約62ビットに達する, (3) 音符列・楽譜の場合も文字列・文章の場合も, 上記のような階層構造に従い, まとまりが大きくなるほど1回の注視で受容する情報量が増加することが数値的に示された.
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