小児歯科臨床において遭遇する心身症は,患児を取り巻く環境に起因するものが多い。したがってその治療には,歯科心身医学的な立場からの環境調整や心理療法が必要である。今回筆者らは,心理的因子により発現した顔面チックを持つ9歳の患児(男)に対して,歯科心身医学的アプローチを行い,次のような知見を得た。
1 . 保護者に対するインテーク面接の結果, 患児のチックは母親の干渉的な養育態度と学校生活でのストレスが加わったことによって出現し,慢性化したものと診断された。
2.母親に対する心理面接による再教育の結果,母親が患児に対する干渉的態度を反省し,温かい目で患児の行動を見守れるようになった。
3.患児に対するプレイセラピーにより自己表現を行わせることによって,チックの出現回数の減少がみられた。
4.最後にトークン・エコノミー法も用い,好結果を得た。
5.以上の結果から,小児歯科領域において遭遇する心身症には,十分に配慮された条件設定のもとでの歯科心身医学的対応は,非常に効果的であるとの感触を得た。
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