本報告は, 岡山県倉敷市にある大原美術館における教育普及活動の一環として2002年より取り組んできた「ダンスワークショップ-野外彫刻と遊ぼう-」の実践についてまとめたものである。この取り組みでは, 参加者の心と体をほぐし, 野外彫刻に触発された即興的な身体表現活動を通して, 全感覚的な彫刻の鑑賞体験を実現させることを目指した。また, その内容については, 毎年, 検討・修正を加えてきた。
その結果, 参加した子どもたちは, 彫刻に触れ, 登り, 抱きつき, 寝転がり, まわりこむといった彫刻との身体的な関わりを積極的に行い, その行為を楽しむと同時に, 彫刻の持つ様々な表情や力を発見し, それらを手がかりにした個々の自由な身体表現を実現させることができた。更に, この身体活動を通して, 子どもは自己と美術作品との関係を深め, 視覚だけによる鑑賞とは質の異なる経験になったと考えられる。このことから, 本実践は, 学校教育以外の場において, 子どもの豊かな体と心を育む教育への大きな可能性を示唆しており, 美術館の教育事業の中に身体表現活動による鑑賞という一石を投じるものであると考える。
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