北海道有林空知管理区240林班(以下240林班)では、1973年に
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マツを10m幅 5条植栽・おき幅8mにて造林を行い、現在30年生である。おき幅にウダイカンバが侵入し、
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マツと競合している。 現在
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マツとウダイカンバの混交林に仕立てることを目的に施業が行われているが、
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マツの成長をウダイカンバが大きく上回っている状態にある。
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マツの成長を確保するために、どのようにしたら良いのだろうか。 当地の
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マツの成長は、
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マツの期首サイズのほか、隣接ウダイカンバとの競争、
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マツ種内の競争によって決まっていると考えられる。それぞれについて、
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マツの成長に与える効果を検討した。 1989年、240林班においておき幅に侵入したウダイカンバの本数を調整し、無処理区を含む4区を設定した。同時にこれに隣接する
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マツ成長試験区を5区設定し、成長を計測してきた。
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マツの直径成長(G, cm/6year, 1996年からの6年間の成長)を、
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マツ期首サイズ(d, cm, 1996時点での胸高直径)、
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マツ胸高断面積合計(todo, m2/ha, 1996年)、隣接ウダイカンバ胸高断面積合計(udai, m2/ha, 1996年)とに関連させて解析した。「隣接ウダイカンバ胸高断面積合計」とは
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マツ区両側のウダイカンバ区の胸高断面積合計の平均、
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マツ1区と5区については、それぞれウダイカンバ1区と4区のウダイカンバ胸高断面積合計のことである。解析にはYokozawa and Hara(1992), Umeki(2001)に準拠し、次のモデルを作成し、ステップワイズ重回帰分析を実行した。G=a1 d + c1 d todo + c2 d udai + INT (1) ここで、第1項は
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マツの期首サイズの効果を表し、第2項は
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マツ種内の競争効果、第3項は隣接ウダイカンバとの競争効果を表す項である。a1 ,c1 ,c2 は回帰係数、INTは切片である。 ステップワイズ重回帰分析の結果、作成されたモデルは以下の通りである(R2=0.541, p <0.0001)。G = 0.373 d - 0.00188 d udai - 1.911 (2)
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マツ期首サイズ(標準回帰係数:0.722)、隣接ウダイカンバとの競争に関する項(標準回帰係数:-0.200)が選択されたが、
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マツ種内の競争に関する項は選択されなかった。
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マツの成長に影響を与えているのは、
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マツ期首サイズと隣接ウダイカンバとの競争であり、
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マツ種内の競争はみとめられなかった。
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マツの期首サイズは変えられないが、ウダイカンバとの競争強度はウダイカンバの間伐によって調整できる。それゆえ、この240林班の
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マツの成長を確保する目的には、
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マツの間伐を行うよりも、まずはウダイカンバの間伐を行うことで種間競争を減らし、間接的に
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マツの成長を促進させる方がよい、といえる。 2003年、240林班の一部(12ha)において、本研究の成果などをふまえ、ウダイカンバの育成と
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マツの成長の改善をねらい、ウダイカンバの間伐をおこなった。結果を数年後に検証する予定である。
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