本論文では,NGN時代の新しい映像サービスとして期待される高臨場感映像通信に向けた圧縮符号化技術について,現状の研究開発状況を概観し,今後の研究開発に向けた課題を論じる.まず最初に,高臨場感映像表現のための要素として,空間解像度,時間解像度,色表現,画素深度,視点解像度の五つの軸を考え,これらに対する映像符号化の要求条件を整理する.次に,高臨場感映像表現に必要となる膨大な情報量を効率良く圧縮する手法への取組み状況を紹介する.これには動画像圧縮国際標準方式MPEG-4 AVC/H.264をベースとできるが,高臨場感映像の性質や表現に応じたパラメータ拡張が必要とされる.最後に,ネットワーク環境や視聴環境にシームレスに適合するためにスケーラビリティの概念が重要であることを示し,映像符号化におけるスケーラビリティを四つの軸,すなわち,画質スケーラビリティ,アルゴリズムスケーラビリティ,アーキテクチャスケーラビリティ,映像提示スケーラビリティに分類する.それぞれのスケーラビリティについて現在考えられている実現方法を詳細に述べ,問題点の抽出と今後の課題を整理する.
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