抄録
複合現実感表現 (MR; mixed reality) は,コンピュータグラフィクス (CG)による仮想像と実環境との整合のとれた重ね合わせが重要である.本研究では,ハイダイナミックレンジ(HDR)動画像を入力として,イメージベースドレンダリング(IBL)とマーカベースの位置合わせを同時に行うシステムを提案する.実環境の照明条件をCGに反映させる方法には,IBLがあるが,実環境の光源強度分布を推定するには,従来のカメラによる入力画像では階調が飽和してしまい,正確な光源の強さを得ることができないことがある.またMRではCGを実環境像上に重畳表示させるためにマーカが使われるが,マーカーを検出する際に,やはりカメラの感度によってマーカが識別できない場合がある.以上の問題を解決するため,本研究ではHDR動画像を入力とすることで,実環境をCGに正確に反映させるシステムの構築を目指す.シャッタ速度を制御可能なカメラを1台使用したシステムを実装し,IBLとマーカ検出を並行して行う.従来手法との比較を行うことにより提案手法の有効性について報告する.