C_<60>^+, C_<60>^<2+>, C_<60>^<3+>, C_<70>^+,及びC_<70>^<2+>の衝突励起分解(Collision-induced Dissociation:CID)をフローティング衝突室及び光ダイオードアレイ検出器を備えたタンデム質量分析計を用いて研究した.この高分解能装置により、C_<60>^+とC_<70>^+の最小偶数フラーレンは両方ともC_<32>^+であることが見いだされた.また,C_<70>^+の分解パターンはC_<60>^+以下で
バックミンスターフラーレン
C_<60>^+のそれとよく類似していることから,各分解ステップに較べ,イオン構造のアニーリングがずっと速く起こることが示唆された.また,小さいクラスターイオン(C_β^+:β≤32)の出現電圧はCM衝突エネルギーで,C_<60>^+に対しては約6.6eVであり,C_<70>^+に対しては約7.1eVであった.一価及び二価のC_<60>とC_<70>に対するCIDスペクトルは,それらの分解イオン,He@Cn^+やHe@C_n^<2+>,を含めてヘリウム原子の内包を示すイオンピークを与えた.さらに,非自由場での分解と思われる幅の広いイオンピークが観測され,このピークの出現はヘリウムとの衝突においてのみ見いだされ,またヘリウムの圧力とも相関が見られた.この事実は,これら幅の広いピークは準安定なヘリウムの内包によるゆっくりとした分解として解釈された.
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