すべり面に発揮されるせん断強度を直接的に計測することを目的とし, 不撹乱含すべり面試料中のすべり面を試験時せん断面に一致させられる一面せん断試験装置を開発した。本試験装置を用いて, 新第三系堆積岩地すべり, 変成岩地すべり (破砕帯地すべり), 温泉地帯地すべりに属する日本各地から採取した全124試料に対して試験を行い, すべり面のせん断強度特性として典型的な応力径路の線形を確認した。また, 試験結果を地質毎に分類し, 対象試料の物理的特性や電子顕微鏡を用いた観察結果等を踏まえて考察を行い, 新第三系堆積岩の多くの地すべりの場合に, すべり面上に見られるスメクタイトの存在が残留強度に強く影響を及ぼしていること, さらに変成岩地すべりではすべり面粘土中に含まれる粗粒径成分の多寡が強度に強く影響すること等を明らかにした。さらにリングせん断試験で得た残留強度との比較を行い, すべり面粘土の粒度組成がリングせん断試験用試料の採取, および粒度調整処理によって大きな変化を生じない場合に, 両試験結果が一致することを明らかにした。
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